メディア・クエスター

メディア・コンテンツ業界に関する発信(海外やビジネスモデルへの言及が多い) 連絡はqumaruin(あっと)gmail.comまで。

カテゴリ: 私見

こんにちは、大熊(くまりん)です。
先日久しぶりに大学に行ったら、経済学部3年の後輩たちが不慣れなスーツを着込み慌しそうにWebテストを受けたりグループディスカッションの練習をしていました。
今が外資系の大半と日系の一部が開催するサマーインターン選考まっさかりです。
大手意識の高い学生にとっては、日系就活解禁を遅らせたのは長期化を招いただけですね。

「新卒で新聞社に就職」に対して、就活してないメディア人志望の学生が思うこと

先日こういう記事を書いたのですが、より一般化して就活の話をします。今日はメディア論関係ないです。
僕の主張は「行きたい会社が明確な人と、超優秀ではない人は正攻法の就活をするな」です。

何故なら、無闇に死ぬことになるから。

どういうことか。最近は批判も強いですが、「リクナビ」や「マイナビ」が大量のエントリーを煽ってきます。
リクナビ
(デイリーニュースより引用)
結果、大手企業では倍率数百倍も珍しくなくなったのは衆知の事実です。これは何を引き起こしたか。

「そこそこ優秀」な学生は大変

内定が出まくる人と中々でない人に二分したのです。会社によって「優秀な学生」「欲しい学生」の定義は違うものの、何か秀でた人は余所でも秀でていると評価されがちで逆もまた然り。
で、全然でない人はどうするのかというと、とにかく受けまくる。実感ベースで、東大経済学部生の5~6割が該当します。20~30社は当たり前。頑張って3000字書いたESも数社からは切られる。何回もOB訪問繰り返し、面接の練習しまくる。そして何とか1,2社に内定する。
まあ、しんどい流れなわけです。メガバン志望者なんか、平日の昼間でも何回もリクルーターから呼び出されていました。それでも最後は電話一本で落とされたりします。
結果、かろうじて受かった会社に対する忠誠心が物凄く高くなり、「オレたち、すごくね?」とか思うようになったり。

意外に知られていないが、内定者に強烈な選民意識と自己陶酔感を与えて正社員メンバーの一員として4月1日に迎え入れることも、採用セクションの重要なミッションだ。

就活コンサルの城繁幸さんが言うようにこれもまた企業側の戦略の一環です。内定後の満足度が高いのはいいことでしょう。しかし入社3年後の離職率は30%という時代で、バカ正直に必死に選考フローに乗ることは、果たしてそれでも合理的ですか?

運まかせの面接を受けるという巨大なリスク

そして日系大手採用で最大の勘所となることの多い面接では、「大学時代に頑張ってきたこと」がすさまじい勢いでコモディティ化します。
途上国にボランティア行ったとか、世界一周したとか、体育会で全国大会出たとか、サークルの代表だったとか。
さんざ言い尽くされてるから「またか」と思うだけで、よくよく考えると本当にやってのけたならどれも凄いわけです。が、10000人も集まるとそういう人が大量に出てきちゃう。何もやってこなかった学生も真似たり盛ったりしてくるので、ちゃんとやってた学生にとって損。本当は彼らの4年間に、価値のある物語があるのに。これは本当に悲しいです。
結局「頑張ってきたこと」も「御社で成し遂げたいこと」もほとんど誰も差別化できないから、面接官との相性とかその場のちょっとしたノリで合否が左右されてしまいます。

面接官「あなたをモノにたとえたら?」学生「はい。消しゴムです」お互いが真剣に迷走中!「人物本位」の就活、こんなにヒドいことになっていた

更に、企業側は無理やり差をつけようとこんな無意味な質問も飛ばしてきます。しかも、最初の段階では人事でもなんでもない、面接初心者が担当してたりもします。

学生同士のグループディスカッションによる選考も、グループにわけのわからない持論を展開して主導権を握ろうとする通称「クラッシャー」がいると議論がぶっ壊されて全員落ちるなんてこともあります。もちろんクラッシャーをなだめつつ議論をリードできればそれにこしたことはありませんが……。

こちらからは面接官も、同じ面接グループの学生も選べません。

だから結論、「面接」に正々堂々と行った時点で負けです。

「コネ」を作るべき。どうやって?

じゃあどうするべきなのか。答えは「コネをつくって、決定権のある人に営業しろ」です。
コネという言葉に卑しい響きを感じるかもしれませんが、実はとてもポジティブな言葉であることを説明していきます。
まず例をあげましょう。

君に友だちはいらない
瀧本 哲史
講談社
2013-11-13



瀧本哲史さんの著書「君に友だちはいらない」で、物議を醸した岩波書店の採用方法が紹介されます。
曰く応募資格に「岩波書店著者の紹介状あるいは岩波書店社員の紹介があること」を明記。
この方式には非難が殺到したそうですが、瀧本さんが解説しているように、編集者志望だというのなら作家の1人ぐらい引っ張ってこれないと話にならないのは当然とも言えます。

これって多くの職種に当てはまりますよね。営業志望なら、顧客に飛び込み営業できないようでは(ry。
企画志望でも、お偉いさんを直接説得できるプレゼン能力がないようでは(ry。
業界によっては、例えば銀行なんかは、「忠誠心」が大事な要素だからあんまり効果がないし、官庁は民間のように柔軟な意思決定はできないから難しいというのはあるでしょうが。

ドワンゴ・川上量生会長 「受験料徴収」の真意 大量の“廃人”を生み出す「就活」
大量にエントリーして1つも受からなかったら、説教をしますね。「なぜ早く俺に相談しないのか」と。入りたい会社があるなら、父親である自分にそこにツテがないかを確認するのが頭のいいやり方だと思います。大量にエントリーするなんて、何を勘違いしているのか……。自分の力を過信してますよね(苦笑)。

 正々堂々と闘い、玉砕する弱肉強食の社会が「美しい」とは、僕は思いません。

自社のエントリーに受験料を課したドワンゴの川上会長もこう言っています。
勿論、コネなんて最初は持っていない人が大半でしょう。じゃあどうすればいいか?いきなりFacebookでメッセージの絨毯爆撃とかだとレスポンスは期待できません。取材の合間などを狙って飛び込み営業しに行くのは一つの手です。
もしくは、自分の知り合いの中で最もコネのありそうな人に相談する。その人に紹介してもらった人を辿って、また辿って……とどうにかアポを獲得する。

もちろんOB訪問の門戸は広く開かれています。電話一本かメール一通で、若い年次の人には会いに行けます。
商社などでは、OB訪問で見込みあると見られたら上に報告してもらえるそうです。
でもそれよりも、がんばって人事部長や役員、社長に会いましょう。採用に直接影響を及ぼせるこの人たちに「面白い」と思われることが大事です。


(次のページに続きます:アポをとって実際に何をすればいいか?そもそも、現実的なのか?)続きを読む

こんにちは、大熊です。
かねてから書いてきたとおり、僕は大学4年生ですが就活をせず、来年1月からアメリカの現地新興メディアに取材する準備を進めています。そんな僕が

「ジャーナリスト志望なので新聞社に就職しようと思っています」「何を言っているんだ、お前は」

というイケダハヤトさんの記事について個人的に思うところがあったので、表題について持論を述べます。
 
僕は、人の面白い部分を発掘して伝えること・人と人とを出会わせて面白い化学反応を起こすこと、自分自身が強く発信することが大好きです。それが一生の仕事にできたらベストです。
特に「瀧本哲史ゼミ」で身に着けた投資分析の基礎と徹底的に調べる姿勢を活かし、経済分野で面白いメディアを立ち上げる起業家ジャーナリストになりたいです。

そうした僕は、短期的にこれからのメディア業界で3つの動きが起きると考えています。

まず1つ目は、「新卒でマスコミに入る人材の質の劣化が進む」。僕と同期でクリエイティビティやリーダーシップ、教養に優れた友人は誰もマスコミに入りません。僕よりも読書家であったり書くのが好きな奴でも斜陽なメディア業界を避け外資系コンサルや商社・銀行・保険に流れます。
優秀な人材が集まらないことは大手全体の危機でもある一方、僕個人にとっては活躍できるチャンスが広がっているとも言えます。

2つ目、これが最大ですが、「個人で活躍できないなら決定的にだめになる」
何故ならたぶん、待遇において格差が物凄いことになるから。今は同一の新聞社・出版社なら、イケててもイケてなくても給料はせいぜい倍しか差がつかないでしょう。
しかし例えばコミックの話ですが4000万部売れた「進撃の巨人」の編集を担当した人と、数万部も売れない漫画しかプロデュースできない編集者の能力差は倍では済まないはず。
これまでは40代で日の目を見ることになる往年の編集者なんていっぱいいましたが、今後は減っていくと思います。
なぜならこれまで出版社も新聞社も終身雇用でがっちり守ってじっくり育てられてきたけど、そんな体力はもうないからです。
そして、1万部の作品しか手掛けられない編集者を100人雇うより、1000万部売れる編集者にその100人分の給料を上げたほうが合理的になるので、一流の編集者の待遇はむしろ総じて上がると考えます。

新聞記者にしても同じで、「吉田調書」のようなスクープをとってこられるスター記者もいれば、叩かれてもしょうがないのではと思うような記事しか書けない記者もいて、その差は非常に激しいです。
新聞社には盤石の不動産収入があるといっても、今後15年で世代交代が起きて決定的に新聞が読まれなくなり、経営が傾いたり今の形での「新聞」はなくなる可能性は十分あります。

でも全国紙の新聞社の記者になると、20代の残りの大半を地方で過ごします。
初めにやることは「サツ回り」といって、検察に夜討ち朝駆けして事件報道の情報をとってくる仕事です。
これが「嫌」「ダメ」とは思いません。むしろ取材力をつけるには最適なブートキャンプでしょう。
実際、いま大手新聞社の30代や40代で面白いことが出来ている記者たちは中途を除いてその経験者です。
しかしやはり新聞社で長くやっていくことを前提としているから、下積みを終えたらもう新聞社に余力がなくなっており、既に抱えている一線級の記者以外は切られるという事態は普通に起こり得ます。非常にリスクが高い。

3つ目は、「ネットメディアの質が停滞していた流れが変わる」。主因はスマホの普及に加え、大手から独立してメディアを立てる「起業ジャーナリズム」が日本でも少数ながら起きつつあり、試行錯誤が行われてることです。この変革期の潮流に乗って活躍できれば、個人としても一気に道が開ける可能性が高いです。一番わくわくしているのはこの流れです。

要するに、今後1、2年で自分が携わったメディアをきちんとヒットさせることもできないなら、メディア人としてやっていけないのです。
もうすでに、ネットの世界では「しょうもない記事書いても時給300円」みたいな時代が来ています。いくら表現することが好きでも、僕はそれで食っていこうとは思えません。

だからもしメディアを今後1年間やってみてダメだったら、諦めて事業会社のサラリーマンを目指すつもりです。

しかし実際、いきなりフリーランスで誰にも依らず己のメディアをやっていくぜ!というのも確かに難しいところです。じゃあどうするのか。

僕が出来ることは、「個」として自分のビジョンをぶち上げ、おもしろいことにチャレンジすることで一線級のメディアマンに「こいつは生意気で未熟だけど、投資してやる」と何とか思わせることです。

一流の編集者と一緒に仕事させてもらって鍛えてもらえる環境を自分の手でたぐりよせられれば、新卒で大手の出版社や新聞社に入社してブートキャンプ的に鍛えられる以上の経験とスキルがつくのではないかと考えています。

近いことを実践しているのが、僕のブログでも何回か取り上げてきた「現代ビジネス」編集者の佐藤慶一さんです。grennz.jpでのインターンで優秀なウェブメディア編集者としての素質を開花し、その実績もあって講談社で働いている方です。他人についてあれこれ詮索するのは行儀が悪いですが、佐藤さんが何かメディアをやろうと思ったらついてくる人は沢山いるだろうし、引く手も数多だと思います。

まずは「NYの新興メディア取材・インターンでメディアの未来を探る」という企画を最大限に成功させるべく努力することを進めていきます。来月からはNewsPicks編集部という新しいバイト先に勤めることになったので、そのチャンスもモノにしていきます。

僕は行ってませんが本日、日本版ハフィントン・ポストの一周年記念イベント「未来のつくりかた」がありました。
このハフポというメディアへの期待と現実、その巧妙なずれについて書きます。

日本上陸に際しての大きな期待

ハフポ日本版は鳴り物入りで日本に上陸しました。本国アメリカのハフポはピューリツァー賞を獲り、ニューヨークタイムズなどの看板記者がどんどん移籍しにくる怪物メディアです。hahupohongoku
日本版は、上陸前からあれやこれやと噂が飛び交い、公開1か月で「失敗だ」との声まで出ました。

ハフィントン・ポストとかほんと何だよ。朝日新聞は目を醒ませよ。

ハフィントン・ポスト上陸で明らかになったプロレス団体化、ロックフェス化するネット論壇サイト

裏を返せば、そこまで期待されていたということです。ハフポにかかる漠然とした期待の正体って、何なんでしょうか?


日本では2009年から、ライブドア(当時)が「BLOGOS」で本国ハフポ同様のモデルを始めました。個人の発信でネット言論をよくしようという理念をもつメディアで、管直人元首相とか田原総一朗さんの記事もよく載ります。しかしその政治的に中立な姿勢から、拾えていないニーズがありました。

「リベラル論壇」の理想と現実

日本版1周年にあたりハフィントンポストに期待すること ―「リベラル論壇」であり続けて欲しい

そのニーズとは何か。英国のジャーナリスト、小林恭子さんの記事が物語っています。現在の日本のネット空間では、ネトウヨ的な言論が圧倒的にウケます。そうした排外主義へのカウンターパートとして、既存のリベラル系の新聞や雑誌がうまく機能している気も、しません。ヤフー個人やBLOGOSも、建前上フラットなプラットフォームです。だから「健全なリベラル言論空間」が期待されたんでしょう。本国ハフポは明確にリベラル寄りという背景もあります。

けれどもハフポ編集長の松浦さんは、自らを「戦術家」と呼びます。メディア人独立の時代が来る!と叫ぶ佐々木紀彦さんやメディア・メーカーを提唱する田端信太郎さんのような大言壮語の「戦略家」と対比して、定まった目標に対してベストなアプローチを繰り広げていくことが得意だと言います。

ハフポのターゲット層を団塊ジュニア世代に設定したのも、パイが大きい割に訴求できているメディアが少ない、しかも労働や育児など様々な社会的課題を抱えていてチャンスあるという合理的な帰結です。

そこに「健全なリベラル、云々」という理念的なものを期待するのは、少しずれている気がします。


しかし幸運なことに、「健全なリベラルの話題」って、実はFacebookのシェアとの相性が物凄くいいんです。以前取り上げたバイラルメディアのUpworthydropoutに近いです。

象徴的なのが、今年1月に境治さんが執筆した「赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない」という記事です。育児問題を提言する素晴らしい記事ですが、これは16万以上の「いいね!」を獲得しました。とてつもない数です。ハフポに対するこれまでの累積いいね!数(8.9万)より多い。
 いいね

でも考えてみたらFacebookに「赤ちゃんにきびしい国で~」という記事があがってきたら、とりあえずいいね押しますよね。一方、集団的自衛権の行使についての激論って、たとえ賛同してようがシェアするのは結構勇気が要ります。(小保方さんを貶めるな!みたいな陰謀論が数千いいね!を獲得してたりも、しますが……。)
「健全なリベラルの話題」は、理念というより、戦術としての有効性からも推進されています。
境さんの16万いいね!は、ハフポの方向性を正当化した瞬間でしょう。本日行われた1周年イベントでも、境さんは登壇しました。

いわゆる「猫画像批判」についてもこの文脈から理解できます。ハフポって、よく動物の画像記事をアップしているんです。


猫

猫、可愛いですよね!いっぱい見られてシェアされがちです。それに対して、「それが作りたい言論空間なのか」みたいな批判は時々見られますが、お門違いなわけです。ユーザーが見て楽しめてシェアしたいと思えるものを提供するのがハフポだから、猫画像も立派な手段の一つです。本国ハフポでも、猫の画像は多数扱われています。

「未来」をつくるための課題

戦術としてのポジティブな言論、シェアしたくなる素材をうまく集めてきたことで、ハフポは月間で1000万人以上のUUを獲得しました。
hahupo

よく揶揄されたように、日本上陸して大失敗した「オーマイニュース」の二の舞にはならないという雰囲気が見えてきました。
問題は「その先」に行けるかどうか。月間PV5000万、UU1000万というのはこの手のメディアの一つの限界です。東洋経済オンラインがそうなように。

松浦編集長の目標は「より多くの人を楽しませる」ことですが、ここから更に拡大する際の仕掛けはどこにあるのでしょう?


もう一つ根本的な問いがあります。ネット空間に、この規模で良質なメディアを作ったのは素晴らしいことです。しかし「いい話」ばかりがどんどんシェアされ、荒れるのを防ぐためコメント欄にも検閲が入る「人工的な美しすぎる空間」は、どこかネットの本質と相反する気もします。美しい空間であり続けられるのか、それとも結局「ウェブはバカと暇人のもの」なのか。



日本版ハフィントン・ポストの今後を追うのが非常に楽しみです。

今日はプロブロガーとして第一線で活躍しているイケダハヤトさん(@ihayato)にお会いしてきました。


インタビュー内容はまた後ほど記事にしてアップしますが、すぐに実践できるアドバイスとして、
「ブログ名からコンテンツの内容が分かりにくいし、SEO的にもよくない」というお言葉をいただいて納得したので、ブログ名を変えました。「くまりんのビッグベア・ウォッチ」という名前を気に入ってくださっていた方々には申し訳ありません。

questには"(まだ明らかになっていない真実や宝物を)探し求める"という意味があり、「メディア・クエスター」はこのブログの方向性を表す言葉で、ひいては今のところ僕が取り組み・目指していることそのものです。
 
重々自覚していることですが、僕はまだ何も大したメディアを立ち上げたわけでも、コンテンツを作ったわけでもありません。

イケハヤさんからも「期待しているよ!」という激励をいただいたのをはじめとして、インタビュー相手であるジャーナリストやメディア経営者の方々から応援の声をかけてもらい、「やはり、米国現地メディアを調査する需要はあるんだ」という確信は深めていますが、実際に渡米するのもまだ先の話です。 
一方で僕がベンチマークの一つにしている「メディアの輪郭」 という海外メディア紹介媒体を作っている佐藤慶一さん(1990年生まれ)は、実際に途上国情報発信メディア「トジョウエンジン」を立ち上げた経験を持ち、現在は現代ビジネスで編集者としてバリバリ現場に出ています。
それを見ておきながら何故僕は今ブログ以外にメディアを作ろうとしていないのか?

ここで、僕が「アメリカ新興メディアへの取材留学」というものをやろうと思った理由を、今一度説明させてください。

僕は昔から根っからの活字大好きっ子でした。小学2年で「ズッコケ3人組」シリーズを読んだのがきっかけでそれから大学生になるまでずっと年間数百冊ペースで読んできましたし、中学生の頃までは自分で小説も書いていました。


総計でノート十数冊分+原稿用紙数千枚分にはなります。小学校の係で「生き物係」とかに加えて「新聞係」「文芸係」とかをねじ込み、新聞もどきを立ち上げたりもしました。
ネットで読んだり書いたりするのも大好きで、中学生にしてネトウヨを拗らせて2ちゃんねるでの議論に没頭したこともありました。 

ですが、大学3年生になって就活に向けたサマーインターンを考える際、メディア系の企業は意図的に除外しました。なぜなら、「メディア業界はオワコンだ」といたるところで目にしたし、聞かされていたからです。出版不況、記者の不要化、下降の一途をたどる市場規模、云々。メディア好きだからこそ、その未来のなさを知って敬遠していました。だから、「テクノロジーが世の中を変える流れを追いたい」という気持ちは、コンサルタントとかバンカー、或いはITベンチャーでの実行者として果たしていくしかないのかなあ、とぼんやりと考え、(周囲の東大生にも流され)、そういった企業に応募して、落ちたりたまに受かったりしていました。

大転換のきっかけは、ある企業のインターン課題で、書籍ビジネスについて調べているときに出会った「五年後、メディアは稼げるか」(東洋経済新報社)という本でした。
 




この本はオワコン化していくメディア業界を生々しく描写しつつ、実は最先端のIT企業が最も古びたメディア企業を変えているまさに最中で、非常にエキサイティングだ、と語っていました。そして時代の潮流を乗りこなし、新しいマネタイズ方法を考えたメディア人は、引く手あまたになる、と。

それがこの上なく面白いと思ったのです。まさしく「テクノロジーが世の中を変えていく流れ」で、対象は僕が好きなメディアというものそのものです。それに、まだ誰も見つけていない答えを見つけられれば自分自身はオワコンにならずスターになれるというところにロマンも感じました。

だから僕は、まずは今最先端を走るメディア関係者に取材して、メディアの未来のヒントを探ろうと考えました。そしたらやっているうちに、この目的に対して僕と同じ手法をとっている人が案外少なく、やりようによっては需要が高い、という自信を得ました。"メディア関係者への取材"というコンテンツ自体でまだしばらくはやれることだらけだし、学びたいことだらけです。
これが行き詰まり、実際にメディアを動かしてみないとこれ以上分からない、というところまで来たら「メディア・メイカー」にもなるつもりです。アイディアはいくつかあるので、取材で得た知見をフルに活かして、チームを結成してメディアを立ち上げたくなると思います。

それまで、しばらくの間は動き回り話を聞きに行き続ける形でメディアの未来をクエストしていく所存です。


ブログを始めてちょうど1か月がたちました。
始める前は「こういう企画で誰か応じてくださるんだろうか」と不安でしたが、思った以上に反響が得られて自分でも驚いています。
これまでのところ、佐々木俊尚さん(ジャーナリスト)を皮切りに、瀧本哲史さん(投資家)・津田大介さん(ジャーナリスト)・梅田優祐さん(経営者)の4人にインタビューすることが出来、相談という形で堀潤(ジャーナリスト)さんと朝日新聞メディアラボのメンバーの方々のお話も伺えました。
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(4月15日、津田大介さんとの撮影)

まだまだ未熟ながらも、ここ1ヶ月を振り返る意味もこめて、「会いたい人に取材してブログに書く」というプロセスがいかに効率のいい学習方法かを説明していきます。

1.下調べに真剣になれる。

これまでお会いしてきた方々はみな各方面で活躍されていて、当然ながらものすごくご多忙でした。
そんな中でわざわざ時間をとって会ってもらう、しかも報酬などもお支払いできるわけではないので、せめていい質問をしなければ、相手に何か真新しいことを与えねば、というプレッシャーが働きます。

しかしこれは簡単ではありません。著名な方はインタビュー経験も豊富で、きちんと下調べしないと確実にネタがかぶります。
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そこで過去のインタビュー記事はなるべく読むようにし、著書にも全て目を通すようにしました。資料も漠然と読むのではなく「どういう切り口で書かれているのか」とか、よく使われるフレーズを認識していって「この人はここに拘りを持っているんだな」などとあたりをつける癖がつきました。

2. 生で1対1で話せるので、濃密な発見がある。

本や講義といった形式をとると、1人ないしは少数が多数に向けて発信するものとなります。そうするとどうしても内容は最大公約数的になりますが、それと比較して1対1で話す密度は段違いです。更には、公表されてないここだけの話も、聞けることがあります。

「東大新入生は新しいゲームを勝ち抜け」瀧本哲史さんインタビュー

の中で瀧本さんが

教授がどれだけ早口でしゃべったところで、自分でノートを読んだほうが圧倒的に速い
と仰っているように、ぼんやりと話を聞くだけなら読むのと比べてよっぽど効率が悪いです。ここで重要なのは、
自分の中で仮説を持っておくことでしょう。下調べに基づいて、「たぶん相手はこう答える」というイメージ像を作っておきます。

例えば僕の関心は「ネットメディアはビジネスとしてうまくいくのか、ジャーナリズムとの兼ね合いは可能なのか」です。取材対象が経済ニュースアプリ「NewsPicks」を出している株式会社UZABASEの梅田さんの時には、「梅田さんはビジネスとして上手くいくと考えてやっているはずだから、上手くいかないケースを挙げてみて、どう答えるかの反応を覗おう」などと考えます。

こうして仮説に基づいて相手に尋ねると、意外性の高い返答に出会うことがあります。それを見逃さず掘り下げていくまた新たな発見が……というようなサイクルが生まれます。この瞬間を味わうことこそ「話す」「聞く」ことの醍醐味ではないでしょうか。

3.音声情報と文字情報からのフィードバックが得られる

1と2については取材活動を始める前からそういう利点があるのではと思っていたことですが、この3についてはやってみて初めて気がつきました。
お話を伺ったあと、記事を書くために録音テープを聴きます。
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(flickr/ippinkan corp)

これをやってると、自分の相槌の打ち方のまずさとか、話の流れをきってしまうところとかが露骨に分かります。
なんでそんなに「なるほどなるほど」ばっかり言ってるんだ自分!というようなつっこみもよく入れます。
やっててめちゃくちゃ恥ずかしいです。恥ずかしいですけど、「ここで話の方向性を間違えたんだ」「ここでは黙っておくべきだった」などがありありと分かります。

何か特殊な活動をされている方以外は、自分の話し言葉を聞いて振り返る経験をつむことなんてまずないはずです。話し方を改善したい場合にはとってもおススメなやり方だということがわかりました。

音声での復習の後は、いよいよこれを文章にします。まとめる際には文章力とか構成を気にするので、もう一度話した内容について振り返れます。振り返りながら、自分なりの表現を探っていくことにもなります。

今のご時勢、仕入れた情報はどんどん流れていってしまい、僕もぼんやり読んで理解した気になったニュースとかは覚えていないことも多いです。

一方、みっちり下準備して仮設を立てる→生で話きく→音声情報から復習→文字情報でアウトプットをするという多方面からのアプローチで得られた情報はしっかり定着するストックになります。
何より、ここまでやると非常に楽しいです。

4.思いがけない出会いがある。

以上の過程を経て作った記事をブログに公開すると、ネットの世界に野ざらしにされます。どれだけウケたか、誰に読まれたかということがリアルな数字に表れてくるので、そのまま次に活きます。

そして、ブログで公開してみると意外な出会いが早くも沢山ありました。

投資家の五月さんが興味を持ってお話を聞きにきてくださったり、、新聞社の人に読んでいるよと言っていただいたりもしました。次の学習の機会も広がってくるのです。

これらはやる前からは予想もつかなかった、とってもありがたい成果です。


まとめると、高いモチベーションで準備できて、多方面から濃密な情報が得られる、という点で、今までやってきたどの勉強法よりも効率が良いです。


こうした「取材学習」とでも言うべきスタイルは、他のことにも応用できそうです。学問の興味ある分野について、その分野を研究している先生たちに取材するとか。趣味を突き詰めたくなったから、その分野で優れた人に会いに行って発表するだとか。


勿論、今回挙げたような利点を僕自身も完璧に活かせているとは言いがたく、準備不足を痛感したり、まずい作法をとってしまったと反省する日々ですが……。


これからも、会ってくださる方々に感謝しつつ、より実り多い取材学習となるよう進歩していきたいです。

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