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カテゴリ: 取材

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(Twitterよりキャプチャー)

「君に友達はいらない」「僕は君たちに武器を配りたい」の作者である瀧本哲史さん
(京都大学客員准教授)に、東大新入生の意思決定について語っていただきました。



受験と大学生活は別のゲームであると理解せよ

――  本日は、東大を卒業されている先生に東大新入生に向けてのアドバイスをお話しいただきたいです。


瀧本 まず受験と大学生活、就活は非連続であるという前提を知る必要があります。大学入試というのは採点しやすいように答えが一意に決まっていて、時間をかければ誰だってできるようになるものです。だから時間の制限がある中で及第点に達することを目指すゲームです。

しかし、これからは違います。大学では自分で問いを立てて答えを探していかなければなりません。 みんながやっていることにとりあえず合わせるなんてしていてもダメです。もちろん、それで何とか凌ぐことも可能ですが、今度は就活、社会に出て、あるいは研究をしようとしたところで、より苦労することになります。

ここで、東大生にとって不幸なのは"進振り"があること。これは受験と全く同じゲームなので、こちらに最適化してしまうと、間違った方向で癖がついてしてしまうわけです。


大人数講義は"中世の仕組み"で、効率が悪い

瀧本   はっきり言って大人数の講義に出ても効率が悪い。大人数講義は、中世のボローニャ大学で、入学希望者が増えてきて教員の数が足りない、どうしようという問題に直面した時に編み出された知恵です。中世のイノベーションを現代でそのまま使っているだけで何の意味もない。だって、教授がどれだけ早口でしゃべったところで、自分でノートを読んだほうが圧倒的に速いでしょう。それに、教授が義務感でやっていて、研究成果がつながっていない、誰も満足していない内容の講義を聞くよりも、図書館に行けば名声の確立した教科書が必ずあります。特に本郷の図書館は学部ごとにあって専門書も充実しており、12年生も利用できるのでぜひ使うべきです。
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マスプロの授業が非効率なことは教員側も知っていますが、文科省が時代に追いついていないのです。実は、"出席点"というのは文科省的には本来認めないことになっている。というのも、全部授業に出るのは当然だろうと考えているわけです。

幸い、昔の東大生たちはこうした問題に対して"シケプリ"という制度を発明しました。この賢い先人達の知恵に乗っかりましょう。


では、そうやって捻出した時間で何をするべきか?ゼミはおすすめです。駒場にも全学ゼミナールという名称でいくつもゼミがあります。これは先生の趣味で開かれていることもありますが、それがゆえに逆にとても熱心ですし、少人数で実践的なものが多い。昔とっていたOBOGとの繋がりが濃いところもあってネットワーキングもできます。


サークル選びで考慮すべき3つの要素

―― 僕自身3年前に東大に入学したときは右も左もわからない青年でした。そうした学生にとって、サークルの選択は重要だと思います。サークル選びのアドバイスはありますか。


瀧本  考慮すべき要素は少なくとも3つあります。

まず、どういう分野であれ、強いサークルをおすすめします。というのは弱いサークルに入ると負け癖がついてしまう。東大には、ニッチだけど強いサークルというのがたくさん存在します。総長賞を獲った競技ダンス部とか、世界大会に出ているレゴ部だとか、奇術愛好会なんかもそうですね。

こうした団体には短期間でその分野で勝てるようになるノウハウが蓄積されていて、それを学ぶことの意義は大きい。

2つ目はインカレの組織であること。東大生以外と関わりを持っておく機会は貴重です。私が学生時代所属した弁論部は、インカレの組織にと連携していて、そこにはいろんな大学の人が集まってきていました。

3つ目は社会人とのかかわりを持てること。会いたいと思えばいろんな社会人に会えるのは学生の特権です。


――学生のサークルや部活での取り組みというのは、社会人からしょせん学生レベル」みたいに言われることもあります。一方で学生で起業してそのまま成功を収めるような学生レベルを超えた人もいると思いますが、その差はどこにあるんでしょう?


瀧本   普通の会社で社会人を数年やったぐらいで人はそれほど変わらないし、学生は本当はしょぼくなんてないですよ。要はチャレンジングな環境に早く飛び込めるかどうかの違いだけです。ただ、学生への期待、要求水準が低いというのはよいところもある。言い換えれば、なめてもらえるわけです。学生だから得られるチャンス、入り込めるところは結構あります。それを有効活用しない手はないですよね。


正解は自分で見つけるしかない

瀧本   いろいろと要素を挙げてきましたが、ここでも、やはり、全員にとって正しい答えなんていうのはない。多くの人がやっていることにとりあえず従うのと同様、私が言っていたから従う、とかは無意味です。同様に、取り合えず何かやっておかないと不安だからとりあえず、国家試験のために予備校に通おうとする人のことを、これからの官界なり法曹界が求めているわけでもない。受験までとは違う新しいゲームが始まったことを理解して、自分なりの答えを見つけていくしかないわけです。


―― 先生にとっての正解は弁論部だったかと思います。出会ったきっかけは何ですか?


瀧本   高校の同期のサークル訪問につきあったら、たまたま優秀な先輩に出会ったのがキッカケです。そして、その入りたがっていた同期は入部せず、関心がなかった自分が入部したという。。入学してみると、「東大生もこんな程度か」と失望することも多いかとは思いますが、優秀な人を見つけて、ついていくのも手です。そこに行きつくまでにはいろいろなところを回る必要もあるし、いわゆる"サークルジプシー"にも一定の意味があるんじゃないでしょうか。


――1年の時には出会えなかった人、わからなかった人もいると思います。特に地方出身者には情報がない。実際僕が今所属している競技ダンス部見つけたのも1年生の終わりの時期です。そういう人はどうすればいいでしょう?


瀧本   出遅れる人が多数派です。気付いた時点で、自分で意思決定していくしかないですね。大事なのは以前に行った意思決定による投資に固執ないこと。これを経済学では「サンクコスト」と呼びますが、サンクコストに縛られて不本意なのに方針を変えないとかはもったいない。


瀧本ゼミはあるべき大学教育の一ケース

―― 僕自身もゼミ生なんですが(笑)、改めて、先生が開催されているゼミの目的をお伺いします。


瀧本   もともと京大で持っている「起業論」の授業を一コマ駒場でやったのですが、そのゼミ生から、授業が終わっても引き続きゼミをやって欲しいという要望があって、京都でもやっている「企業分析」を行う自主ゼミを開きました。東大はパブリックセクターに関心を持つ学生も多いので、企業分析に加えて、「政策分析」の自主ゼミも作りました。どちらも、答えがわからないものをリサーチするという手法は同じです。ニッチなテーマですが、コンテストで優勝したりして強いサークルといって良いでしょうし、慶応医学部の人が入っていたりとインカレであり、実際の一流のファンドマネージャーや政策担当者を審査員に招いたりと社会人との接点があるという要素は先ほどサークル選びの三要素は充たしています。


同時に、瀧本ゼミは、サークルとしてだけではなく、所属する組織一般としても卓越した場にしたいと思っています。私はよく「どういう会社がおすすめですか?」と聞かれるのですが、その時にみはらしが良く、ブートキャンプ(アメリカの軍隊の新兵訓練施設)的なトレーニングで鍛えてくれる場所であり、クラブ的であることを挙げています。要は、世の中を幅広く観察し、徹底的に学ぶ場であり、その苦労をともにした仲間のネットワークが長く続く組織ということです。瀧本ゼミは、これらの条件を充たすように設計しました。最初の話に通じますが、あるべき大学教育の実験モデルとして実践しているつもりです。

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「東大でもこんなもんだ」で終わらせない

―― 本日は貴重なお話をありがとうございました。最後に何か一言いただけますか


瀧本   東大に入る価値のひとつは、「東大でもこんなもんだ」と思えることです。入れなくて後々までくやしがったりすることは生産的ではないです。そうした後ろ向きなことを考えないで良いことは大きいですね。ただ、「こんなもんだ」と思う人の大部分は、東大の価値を十分に味わっておらず、もったいないこともあると思います。例えば、理系に限られますが設備ひとつとっても、学費を考えればあり得ないぐらい恵まれています。しかし、東大の価値はそういったわかりやすい目に見えるものと言うよりも、日本、あるいは世界の知的あるいは人的ネットワークと繫がるハブとして最も優れている場の一つだということだと思います。機会があってもその価値がわからない人には、活用できません。宝の山に入って、手ぶらで帰ってくることだけはないようにして下さい。


瀧本哲史。京都大学客員准教授、エンジェル投資家。
東 京大学法学部卒業後、学卒で助手(現在の助教)となるも、外資系コンサルティング会社マッキンゼーに転職する。3年で独立して、投資業、コンサルタント、 評論活動など幅広い活動を行う。現在はエンジェル投資家のかたわら京都大学で意思決定理論、起業論、交渉術の授業を担当している。

 ※こちらの記事は東京大新聞オンラインに寄稿したものの転載です。



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(Twitterよりキャプチャ)

ITジャーナリストとして名高い佐々木俊尚(@sasakitoshinao)さんに、前半部ではメディア業界のこれからについて、後半部では発信力を高める秘訣についてお伺いしました。


「ビジネスとジャーナリズムの折り合い」の答えは見つかっていない

くまりん(以下、くま) 本日はよろしくお願いします。僕は今、ウェブの世界で、新聞社の記事をまとめただけのメディアや、Facebookでのシェアを狙うだけのメディア(=バイラルメディア)がウケている状況を危惧しています。朝日新聞の記者にお話をうかがった時も、「手間暇かけて取材して書いても、それをちょろっとまとめたウェブサイトの方がウケる」と嘆いていました。

佐々木俊尚氏(以下、佐々木 敬称略) コンテンツの質が高いことと儲かることは一致しなくなっていて、それをどうするか、の答えは正直なところ誰もまだわからない。ただ、アメリカでいうとBuzzfeedというメディアはバイラルメディアとしてPVを稼ぎつつ、濃厚な調査報道のための資金に充てている。そうした流れが来るんじゃないか。

くま 今度日本に上陸するBuzzfeedなども同様のことをしようとしていますね。その点でアメリカは進んでいるように思えますが、どうしてでしょう?実情を探るべく、アメリカ現地メディアへの取材留学を計画しています。

佐々木 まずもって、英語圏10数億人のマーケットは単純に日本語圏の10倍だから、なかなか儲からないといわれているネット広告でもビジネスが成り立ちやすい。加えて寄付文化の存在があって、調査報道のために寄付がなされるNPO的な仕組みがある。
お国柄の違いは重要で、たとえば韓国メディアはずっと軍事政権と癒着していたので市民からの信頼度が低かった。そこで民主化してから金大中政権のときに「オーマイニュース」というネットメディアが出てきて非常に盛り上がったが、日本に進出しても大失敗して閉鎖してしまった。日本では一応、大手メディアへの信頼感が高かったためだ。

くま そういった意味では、アメリカでニューヨークタイムズやワシントンポストと肩を並べるようになり、日本に上陸したハフィントンポストが成功するかは気になります。

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(「ハフィントンポスト」日本版 flickr/Takeshi KOUNO)

佐々木 ネットの言論というのは集約されないのが問題だった。その点既存のメディアは「一面」などが決まっていて、そこに議論が集約されていた。ハフィントンポストは日本のネット言論を集約させようとしていて、質の高いブロガーや記者に書かせたり、コメント欄を盛り上げようとしているようだ。だがまだ成功モデルは模索中といったように見受けられる。

くま なるほど。他に、日本のメディア界の革新が進まないとすると、人材の流動性が低いことが理由になるのではないか、と聞いたことがあります。現実にアメリカのように新聞をやめて独立という人は少ない気がします。

佐々木 アメリカでは新聞業界が赤字や倒産で絶望的な状況なので飛び出す人が出ている。日本の新聞社は宅配制度がある以上しばらくの間そこまではいかないのは確か。しかし、雑誌業界はアメリカの新聞同様に悲惨。現にそこから離脱して新しいものを作る人は出てきている。

くま 例えばcakesの加藤さんは、雑誌出身ですね。

佐々木 そう、ダイヤモンド誌出身だね。それに、講談社から独立した佐渡島さんのコルクなんかもある。人材の流動性はそれほど問題ではなく、やはりネットメディアで稼ぐモデルが確立されていないことがポイント。ネットで稼げないなら、雑誌が苦しくなってやめてもネットでやろうとはならない。
ネットメディアで稼げるモデルが出てくるのはこれからだ。1995年にインターネットが普及して、Facebookができるまでに10年かかった。
ネット黎明期の人たちは必ずしもFacebook的なものの登場を予測していたわけではない。それと同様に今想像もされてないメディアのビジネスモデルが出てくるのではないか。だから、君が現地取材をするときも「どういうビジネスモデルが主流になりますか?」と答えを求めても返ってこないから、現地の様子をひたすら追うのがおすすめだね。

ネットビジネスは"金鉱堀り"である

佐々木 誰もがネットメディアの稼ぎ方について成功の方程式を見いだせていない中、アマゾンがワシントンポストを買収したり、ネット通販大手のイーベイが出資してメディアを立ち上げたりしている動向に注目している。
物販も音楽もネットビジネスが進展していき、次はどうやらメディアだ、という流れでEC業界の巨人が参入してきた。ここからアメリカ東海岸を中心にイノベーションが生まれるのではないかな。

くま 既存メディアサイドではなく、外部から大変動が引き起こされるということですね。

佐々木 ただし物販において最終的にアマゾンのみが今の地位についたように、ネットビジネスのイノベーションの過程では無数の参入と大半の失敗、その中から生き残ったものが覇権を獲るということが繰り返されてきた。そういう意味でゴールドラッシュを求めて金鉱を掘るのといっしょで、ほとんどの人は掘り当てられない。掘る人よりもツルハシを配る人が儲かったりするかも知れないね。

くま メディア企業だけではなく、そうした西海岸のIT企業にも目を向け、取材しようと思います。しかし日本でいうと楽天やDeNAのような企業がメディア関連の新規事業を始めるというイメージがあまりもてませんね。

佐々木 それらの新興企業よりはNTTなどのレガシー系の企業のほうが考えられるね。Gunosyに出資しているのもKDDI。

ひたすら実践して、取材力とコンテンツ力を高めよ

くま 話は変わりますが、僕の計画している"取材留学"についてどう思われますか?

佐々木 いいんじゃないか。マーケットとして需要があるかはわからないが、現にアメリカ東海岸の動きを追っている人は、私の周囲でもとても少ないが、興味深いテーマなことは間違いない。だから、どんどんいけばいい。

くま 見ず知らずの日本人がいきなり乗り込んで、新興メディアの編集長がクローズな部分も語ってくれるのか、という点に悩んでいます。

佐々木 ビジネスモデルの根幹に関わる具体的な点は投資家との関係もあるから語れないだろうね。しかし、会社のビジョン、今やっていることとこれからやりたいことなんかは語ってくれるはずだよ。特に、スタートアップの経営者はとてもフランク。
あとはより多く話を引き出す取材力を今のうちにつけておくこと。新聞記者なんかは、殺人事件の遺族とか、非常に話を引き出しにくい人たちからも言質を引き出す能力を持っているわけだから。

くま 留学は来年なので、日本にいる間に多くのジャーナリストの方に会い、取材力を磨こうと思っています。その取材内容をブログにまとめて公開しようと思っているのですが、よりウケるための秘訣はありますか?

佐々木 まず文章力を磨くこと。そうすれば長い文章でも読まれる。ネット独特の話し言葉調にも慣れたほうがいいし、タイトルのセンスも問われる。そして、とにかくたくさん取材して、ネットに公開してフィードバックをたくさん受けること。ネットでは一貫性のない文章にすぐ突っ込みを入れてくる人がいるから、とても鍛えられる。私も集中砲火を食らったりすることがある(笑)

くま 佐々木さんでも炎上することがあるんですか……(笑) 佐々木さんはTwitterのフォロワーも20万人と多く、まさにインフルエンサーという感じですが、どうやってコンテンツ力を高めていったんですか?

佐々木 情報の摂取は欠かさないようにしていて、ストックとフローの2種類がある。フローのほうでは、ネットで1日に2000から3000の記事を読む。ただそれだけでもいけないから、ストックとして古典をたくさん読み、自分の世界観を養うようにしている。
 さらに、プラットフォームの流行り廃りに敏感であることも重要だと考えている。たとえば今や定番の有料メルマガを私は黎明期に始め、幸いたくさんの読者を得ることが出来た。しかしその後ホリエモンも始め、今や誰しもがやろうとして過当競争に陥っている。市場が飽和してから参入してきて「なんだメルマガは稼げないじゃないか」などと言っていてもしょうがない。また、質の低いメディアに投稿し続けると、自分のブランド価値の毀損にもつながる。

くま 書き手がプラットフォームに縛られない時代だからこそ、常にどういう媒体のポートフォリオを組んで書くのかが大事になるわけですね。

佐々木 そうだね。あとは君のコンテンツを成功させるには、ネットで影響力の高い人にTwitterでRTしてもらうなど、グロースハックと呼ばれるやり方がおすすめだ。

くま ぜひ今回のインタビューにおいても、出来上がった記事の拡散を協力していただきたいです(笑) 



(完) 

 佐々木 俊尚(ささき としなお、1961年12月5日 - )

毎日新聞、週刊「アスキー」編集部などを経てITジャーナリスト・作家として独立。

「当事者」の時代 (光文社新書)
佐々木 俊尚
光文社
2012-03-16

「当事者の時代」など、著書多数 

3/28 草稿作成

こんにちは。僕が目指している「取材留学」のあらましを書きます。

 僕が知りたいことは明確で、「デジタル時代のジャーナリズムとビジネスの関係はどうおりあいをつけていくのか」です。

 いま、世界中で紙のメディア業界の苦境が伝えられています。雑誌も新聞も以前のようには読まれません。そのカウンターパートとしてウェブメディア企業が出てきてアテンションを集めていて、伝統的な新聞社もデジタル版を出していますが、経営がうまく行っているところはごくわずかです。
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ウェブ媒体で読めるものは無料という意識付けがあって、課金がうまくいかないからです。デジタル版でいいコンテンツを出してもお客さんは取れず、広告単価は下がる一方です。

伝統メディアがそうしてもがく中、今それらのコンテンツをうまく編集するキュレーションメディアが出てきています。
しかし持てはやされてはいても、売上高では伝統メディアと2桁も違います。
更に問題があって、そうしたメディアは自分たちであまりコンテンツを作りません。みっちり取材してクオリティが高いものを作っても儲からず、テクノロジーの力で軽く編集しただけのものの方がより多くの人に受け入れられるようでは、誰が「取材」や「報道」を担っていくのでしょうか?市民の手にゆだねられるところもたくさんあるとは思いますが、専門家が不要になるとは思えません。
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日本でも同様の現象が起きていますが、アメリカはそうした 状況がより顕著です。新聞社はリストラで30%の人員をカットしました。

しかし、新しい流れも出てきています。アマゾンやイーベイといったIT企業が、次のイノベーションはメディアでおきると見当をつけて参入してきています。ワシントン・ポストは買収されました。
そして名物記者が伝統的なメディア企業を離れて、独立してデジタルメディアを立ち上げる動きが毎日のように報じられています。
ジャーナリズムの震源地ニューヨークで、今まさにメディアのイノベーションが起きようとしているのです。
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そうした流れを生で見て、当事者たちに"ジャーナリズムをどうしていきたいのか"、"取材は誰が担っていくのか"を問いたい。ビジネスとの境界線を感じたい。地殻変動をこの目で見届けて、それを多くの人に伝えたい。

日本とアメリカではもともとのジャーナリズムの土台も、企業の成り立ちもぜんぜん違います。でも、学べることがたくさんあるはずです。

しかし、いまアメリカの流れを現地で追っている日本人ジャーナリストをほとんど知りません。大手新聞社から数名がジャーナリズムスクールに通っているぐらいです。

それならば、幸い学生で身軽な僕が行くことに大きな意義があるのではないでしょうか。

次々と立ち上がる新興メディア企業の編集者を、伝統大手メディアの経営層やデジタル部門を、参入するIT企業の担当者を、そしてアカデミックな場でジャーナリズムを教授する人たちを取材し、そのビジョンを聞き出したい。一日でも置いてもらえるなら、業務の場を見たい、混じりたい。そして、自分で媒体をもってその様子を発信していきたい。
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とはいえ、今の僕はジャーナリズムに関する知識も、実務経験も未熟です。百戦錬磨の記者たちから上手く話を引き出していけるだけの取材力も、まだありません。

そこで、アメリカに飛びだす前に、まずは日本で多くのジャーナリストの話を聞きに行きます。熱意を伝えて、会ってもらって、持論をぶつけあわせてもらうことで、僕に欠けている知識と、取材能力とを引き上げます。自分なりの仮説を磨いた上でアメリカに持っていきます。

これが、僕の取材留学のあらましとなります。




ロードマップ(随時更新)

2014/03 ブログ開設
      佐々木俊尚氏取材
2015/01 渡米
2015/09ごろ 帰国予定

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