ウメキ

スタートアップに特化したオピニオンメディア「The Startup」を運営し、LINEの田端執行役員やnanapi社長の古川健介氏らが参加する「Umeki Salon」も運営する梅木雄平氏。

前編では、そんな彼にだからこそ見えているニュースアプリ業界の現状について語っていただきました。 

ニュースアプリという”小波”

大熊 梅木さんには、ニュースアプリをやるというビジネスはどう見えていますか?というのは、スマホで新しいビジネスしようと思ったときに、儲かるのは圧倒的にソシャゲじゃないですか。ゲームを一本当てたらmixiは時価総額にして2000億以上増えて復活しました。そういう世界にあって、ニュースアプリってごく小さい市場かなと思うんですが、なぜここまで盛り上がっているように見えるんでしょう?
キュレーション市場

(矢野経済研究所より引用)


梅木 おっしゃるとおりスマホが普及して、ソシャゲという"大波"が来ました。で、スマホでニュースも見るだろうということでニュースアプリはその次の小波としてきた感じですね。
ただ小波といっても、最もユーザー数の多いGunosyはすでに月間で数億の売上を上げており、利益率も非常に高いでしょうから時価総額で数百億単位にはなっていると思われますし、実際に2014年6月に追加で12億の資金調達も実施しており、波に乗っている印象です。

大熊 なるほど。GunosySmartnewsの台頭を待つまでもなく、Yahoo!ニュースのアプリ版や、「無料新聞」などのニュースを集めるアプリはあったと思うのですがこれらと根本的に違うのはどこでしょう?

梅木 そうですね。それらのサービスはUIからしてスマホに最適化されていなかったんです。最適化をしたのがGunosyでありSmartnewsであり、AntennaNewsPicksなのだと思います。
 

SmartnewsとGunosyの違い

大熊 Gunosyもマス化に踏み切りSmartnewsに似てきました。最終的にどのアプリが総合的なニュースを扱うものとして生き残ると思いますか?

梅木 新聞も、全国紙という括りだけで45つあってそれぞれ生き残っていますよね。それと同じで、どこか1つだけニュースアプリが生き残るわけではないと思いますよ。
ただ売上面では差がついてきていますね。
Gunosy
はタイムライン広告を導入してきて、月額数億の売上が出るまでになってきています。あそこはよくも悪くも、広告ビジネスの会社です。共同代表取締役を務める木村新司氏はアトランティスというアドネットワーク事業を運営し、GREEに事業売却した経験もあります。広告ビジネスのプロとして売上をしっかり上げてきそうですね。現段階では独自の編集部は置かず、テクノロジーによる民主的なニュースを売りにしており、グローバル展開も進めやすそうです。

一方、Smartnewsは現時点ではマネタイズしていません。執行役員で事業開発担当をしている藤村厚夫氏のような方がおられるので、グノシーのようなテクノロジー主導ではなく、「こういうメディアにしたい」というメディア的な思想が表れてくるのではないかと見ています。
ニュースアプリ

「1PVあたり1円」の実現性

大熊 Gunosyは1PVあたり1円を書き手に報酬を支払えるようなエコシステムを作りたいと言っています。

Gunosy(グノシー)の月次売上は数億円規模に #IVS - THE BRIDGE

現在はどこのウェブメディアも1PVあたり0.1円程度が相場である中、これが実現したら画期的だと思います。しかし、どうやって実現するか僕には想像がつかないのですが。

梅木 ニュースと広告のレコメンドの精度を更に高めることが出来れば1PV1円の世界は夢ではないと思います。Gunosyに取り上げられると1回あたりの流入で5,000から10,000PVになるのですが、自分のメディアで書いたもので、Gunosyを通してそれだけ流入が来るのは魅力的です。 

当面、課金メディアになることは考えにくい

大熊 「Gunosyは広告の会社」とのことでしたから可能性は低いかもしれませんが、せっかく400万人ものユーザーがいるのだから、一部を対象に課金することなどは考えられないでしょうか?

梅木 ウェブメディアで課金モデルをやっているところといえばcakesですが、立ち上げ時に既に有料課金を用意していました。私も今は課金しています。実際の課金数は存じ上ませんが、有料会員1万人もいないのではないかと思います。Gunosyには既にトラフィックが大量にあるので、ゆくゆくは独自コンテンツをつくって課金していくのはアリかもしれません。
ただ課金モデルでユーザーを増やしていくのには時間がかかります。広告で売上を上げために、国内のユーザー数を伸ばし、海外展開を進めるでしょうね。

(後編に続く)
____________________________________ 

20147月中旬には梅木氏の東洋経済オンラインの連載「スタートアップのビジネスモデル」で4つのニュースキュレーションアプリの取材記事が予定されているようです。

Umeki Salon」をテーマに扱った後編は明後日公開します。