withnews 

先日、朝日新聞が新サービス「withnews」を開始しました。
「ブラジルW杯はアフロに注目!」とか「渡嘉敷島にアザラシ現る!もちろん名前は…」
などなど、とてもライトで親しみやすいコンテンツが並んでいます。
長文が大半なものの「記事インデックス」で内容が3行に要約されているところなどは、さながらlivedoorニュースですね。
性差別
(withnewsよりキャプチャ)
この新メディア立ち上げを主導したのは、先日取材させていただいた記者の奥山晶二郎さん。
とにかく新聞社のコンテンツが若者に読まれない現状を踏まえ、若者に読まれることに主眼を置いて作っていると仰っていました。

ただ、ネットでよくある軽いニュースまとめと根本的に違うのは、「フカボリ」をリクエストできる機能です。読んだ記事について、もしくは全く新たに「これを調べてほしい」というのをリクエストして認められれば、プロの記者が実際に調べてくれるのです。亀松太郎さんが次々に興味深いリクエストを投げかけていますね。
亀松さん
(withnewsよりキャプチャ)
リクエストに対して「ホって」という名のいいね!機能もついており、共感が可視化されます。
そもそもサイトのコンセプトに
 あなたと一緒に “気になる”を解決するサービスです。日々のニュースで“気になる”ことはありますか?あなたのリクエストをきっかけに新聞社が一生懸命もっとフカボリ取材します。 いろんなメディアも巻き込んで一緒に “気になる”を解決していきます 
とありますね。
朝日の人は、一記者から社長までみな「これまで新聞社のニュースはコース料理でしかなかった。これからはアラカルトを提供していく」という比喩を使うんですが、「客が料理の味付けに注文をつけられる・まったく新しいメニューを提案できる」というのが今回のポイントです。
または「プロフェッショナルなYahoo知恵袋」と考えてみても面白いかもしれません。

これって、どーなんでしょう。 
動画コンテンツの書き起こしサイト「ログミー」の川原崎さんは懐疑的です。

「メディアはもっと読者とインタラクティブになる必要がある!!」というのはどこのメディアも最近声高に言ってることですが、現状その工夫の主戦場は「コメントスフィア」と「クラウドファンディング」です。

NYTとWashington Post、新たなコメント欄の開発で協力

とにかく読者にもっとコメントしてもらい、もっと本音を語ってもらおう、コメントもコンテンツの一部として成り立つような設計にしようという流れがまず1つ。

世界最大のクラウドファンディングサイト「キックスターター」が「ジャーナリズム」カテゴリーを設置

もう1つは、ジャーナリストが「このテーマを追います」と宣言して出資を募り、共同のプロジェクトとするクラウドファンディング活発化の流れです。 昔から寄付金で活動しているフリーの記者はいたし、ジャーナリズム×クラウドファンディングは非常に相性が良いです。

これら2つはあくまで「取材テーマの設定」から「取材の実行・アウトプット」まではメディア側が保持しています。
一方withnewsは一部で「取材テーマの設定」も読者に渡してみようという試みです。


ECサイトのインバウンドマーケティング元年がやってきた 

ECの世界では、企業が消費者に商品をPUSHしまくるのではなく消費者が商品にPULLされていくインバウンドマーケティングが流行りつつあり、どことなくこれと似ています。
 
読者の求めている記事を書く。メディア側の価値観の押し付けでやらない。と言えばいいコンセプトに思えますが、またレストランの喩えに戻ると「高級店のつもりで来たのにお客の要求で色んなB級グルメをやりだして、何がなんだかわからない」「食べたかった"シェフのこだわり"の中身が、素人客が提案した原料と味付けになってしまった」
になりかねない。多数のユーザーに委ねるCGMはクオリティコントロールがめちゃくちゃ難しいです。
(一方で「編集部ゴリ押し」というコンテンツもあるぐらいで、バランスをとっていく姿勢はすでに伺えますが。)

色々と書いてきましたが、気になることをプロの記者が調査して書いてくれるサービスというのは現状とても使い勝手が良さそうなので、僕もどんどん活用していこうと思います。
良くも悪くも、withnewsのチャレンジは「新しいジャーナリズム」の1つの形になり得るでしょう。

ただ、まだまだ僕自身のメディア運営の経験が浅いため、読者との距離感はどこまで詰めるべきか、わからないことも多いです。
メディアはどこまで読者に寄り添うべきだと思いますか? 書き手・作り手・読み手からの意見をお待ちしております。


追伸
週刊文春デジタル、読者からスクープ情報を募集する「文春リークス」を開始
週刊文春も「取材テーマの設定」を外部から取りに行くことを発表。ブラック企業の内部告発など、この形態だからこそ取り組めるテーマは沢山ありそうです。
長くなり・ごっちゃになることを避けるため今回は扱いませんでしたが、次回文春リークスに関する記事も書きます。