GunosySmartnewsか、はたまたLINEニュースかNewsPicksか――
ニュースアプリが「流通」の基盤を押さえるための競争が過熱する中、全く違った理念に基づいて発信を続ける新興メディアがあります。
「世界に世界を説明する」ことをコンセプトとしたThe New Classic。現役大学院生が中心となって立ち上げ、開設数ヶ月にして月間で数百万のユーザーを集めるこのメディアが描く未来について、編集長の石田健さんにお話を伺いました。

文脈を理解するためのメディア

大熊 本日はよろしくお願いします。ずばりThe New Classic(ニュークラ)とは何か、まずは簡単に説明していただきたいです。

石田 ニュースを解説するメディアで、日本であまり報道されていない海外や政治のネタを中心に扱っています。あくまでストレートニュースではなく、「こういう状況です」という文脈を押さえることを目的としています。 

大熊 海外ニュースの解説といえば「Newshere」など幾つかありますが、ニュークラの独自性はどのあたりにありますか?

石田 我々の特徴は、扱う分野に詳しい修士・博士のメンバーを含めて記事を内製していることです。だから、対象となるニュースの歴史的な経緯や背景にも目を配ります。単なるニュースの配信とは異なります。
分量も長ければいいというわけではないですが、「あのニュースって結局なんだったっけ?」という疑問を解決するためにニュークラに来てほしいので、長くなることもあります。さくっと理解したいという欲求にも応えていますが、それは長いものと両立しないわけではないです。
ニュークラ

「何を伝えていくか」こそが大事

大熊 既にお話にも挙がりましたが、ニュークラは単なる流通を追うだけじゃなくて、きちんと価値のあるものを作っていこう、残していこうという理念が色濃く反映されたメディアだなと感じます。一方でいまは、コンテンツは作らずに集めてきて流通を押さえようというプラットフォーム型のアプリがすごくウケていますよね。

石田 個人的には「メディアの未来」とか議論することはあまり意味がないって思っているんです。GunosySmartnewsは素晴らしいと思いますし、「今まで新聞が朝昼届いていたのが、スマホに一日2回に届くようになります。」っていうのはロジックとして完璧なので、その議論はそういうことだと思うんですよだから、その後で問題になるのは「そこで何を伝えていくのか?」だと思うんです。テレビだったら定められた放送時間で制限されているけれど、それに対して自由に時間をとることができるネットならではのコンテンツを出すとか。
ニュークラはアプリ化するかもしれないし、長文になるかもしれないけど、それは手段でしかなくて、事なのはどういったニュースがどういう切り口で問題化されるかという点だけです
ネットが面白いのってどんどん情報がリンクされていくことだと思っていて。一方の動画は、現状としてはパッケージとしてしか消費できないですよね。
例えば論文に注釈が欠かせない様になんらかの「知」や「知識」を説明するためには、相互にリンクし合ったテキストが、現時点では最も優れたものである気がします。ですから、ニュースを単にいっぱい配信しますよということではなく、Wikipediaそうである様に、ニュースを相互に関連づけて説明するようなデーターベースになれば良いなと思っています。

ニュースを消費するだけのものにしない

大熊 具体的に、データベースというと?

石田 例えばアメリカ大統領選挙に興味を持って、「オバマって何をしてたんだっけ?どう評価したらいいのかな?」って気になっても、Google検索じゃ分からないことが多いと思います。「オバマケア」がどういう文脈で貶されているか、とか時系列に沿って体系的に理解したいわけです
オバマ

そういった意味で
面白いなと思うのが、「Rap Genius」というサイトです。これはラップの歌詞に文脈を説明している、非常に面白い試みをやっているところです。
結局いまって、スマホでニュースを読んでいても、インフォメーションを消費しているだけなんです。しょうもないニュースも歴史に残るようなニュースもインフォメーションとしては変わらない。そこに文脈や新たな情報をひもづけることで価値が出てくると考えています。
さっきも言ったように、ニュースアプリは流通のコストを削減していて、それは素晴らしいことです。で、浮いたコストを使って人類全体が、文脈を理解するほうにもっと向かってもいいんじゃないかと考えています。

大熊 そうなると、ウェブを使ってみんなが賢くなれるという可能性があって素晴らしいと思います。しかし現実的には、ニュースアプリの競合はソシャゲだと言われていますよね。「ニュースをてっとり早く読めるようになった、じゃあもっとソシャゲをしよう」という流れになってしまうのでは?

石田 だから、同じ土俵に立って可処分時間の取り合いはしたくないですね。その意味で、ニュースの流通を担うアプリとは別の部分が大事なんだと思います。
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「世界に世界を説明する」

大熊  そうした理念を持つメディアは、個人的には絶対に必要だと思います。石田さんはなぜニュークラをやろうと思ったんですか?
 
石田 起きている事象について、その背景はこうですとまさにニュークラが理念に掲げていて、あるフランスの歴史家が言ったような「世界に世界を説明する」ことに単純な興味があるからです。本を売りたいか?書きたいか?って問われたら、僕は本を書きたいタイプの人間です。それを売る場所がAmazonだろうがジュンク堂だろうとあまり関係ないと考えるのと一緒で、プラットフォーマーにはあんまり興味がないんです。

大熊 「本を書きたい」のと同じだという今の話、とても面白いです。目標は、より多くの人に読んでもらうことですか?それとも、特定の誰かに深く刺さることを目指していますか。

石田 一部の人向けに読んでもらいたいわけではないです。そうしたメディアならば雑誌とかでも良い訳で日常のあらゆるシーンで「これってどういうことなんだろう?」と気になり、検索する人はいっぱいいるので、それに応えられるものを目指しています。そういう意味では「ニュースサイト」という括りに限定されないですね。いかに単なるニュースサービスじゃない、ニュースの土俵で戦っていないものにできるかが鍵です。

カタイ記事も意外と読まれる

大熊 そうした時に、これからの課題は何でしょうか?

石田 今はまだニュースのパブリッシャーとしてしか見られてなくて消費されている状態なので、「このニュースに日もづいた情報がいっぱいアップデートされていますよ」という風に見せて行きるようにコンテンツを増やしていくことですね。しかし、やってみて、意外にカタイ話も読まれるということに気付けたので、まずはとにかく良質なコンテンツを増やしていきます。

イシケン

本ブログでは、度々「プラティッシャー」等の概念を紹介し、ニュースの流通がどう変わるか、誰がコンテンツを創っていくかという話を展開してきましたが、根本的な「何を創り伝えていくかが重要だ」ということを思い返させていただけるインタビューとなりました。The New Classicの今後の展開に期待です。