「笑い」が無性にほしいときに我々は何を観るでしょうか。やはりなんといってもテレビは強いです。Youtubeについつい没入しすぎてしまうこともあるでしょう。では、出先のちょっとした時間が出来たときは?手元にスマホしかないときは?
新時代のデバイスに対応して、あらゆる「笑い」を提供してユーザーを釘づけにしようとしているのがbitgather社のバイラルメディア「CuRAZY」です。公開初月から破竹の勢いでページビュー数を伸ばしてきたこのメディアを立ち上げた伊藤社長に、その戦略と将来像を伺いました。

CuRAZYとは何か

7b56994f97d478d15979baddd2fa05ea(CuRAZYより)

伊藤 簡単に説明すると、「笑い」部分に絞ったバイラルメディアです。
バイラルメディアというのは、Facebookなどのソーシャルでシェアされやすいコンテンツを配信するメディアのことです。いい話とか泣ける話とかがよくFacebookのフィードに上がってきて、「いいね!」押したりしますよね。
元々アメリカでは先にこの流れが来ていて、「笑い」や「娯楽」などのエンタメ分野では「BuzzFeed」、「政治」などの社会派は「Upworthy」というメディアがツートップです。これらはそれぞれ月間で数億のページビューを稼いでいます。

日本では「Upworthy」と同じ社会派路線で、起業家の家入一真さんが「dropout」というバイラルメディアを作り、伸ばしています。
bc00739925218036f4b2e68efd461763(dropout公式サイトより)
じゃあエンタメ系の「Buzzfeed」に近いものを創ろうということで始めたのが「CuRAZY」です。
BuzzFeed
がやっていることはコンテンツを集めてきてよりウケる形に整理、提供するという形で、アメリカの若者が一日中BuzzFeedのコンテンツをみて楽しめるという状況になっています。「from Google to Buzzfeed」ともいわれるほどです。

スマホでエンタメ系楽しむメディアはここ、となるように

大熊 日本でやってみて、今のところどれぐらいうけているんですか?

伊藤 4か月目で、月間PV1500万ほどです。そのうち82%を占めるのがスマホユーザーで、まさに時代の流れに乗ってうけていると感じています。今は1日に6本ほどコンテンツを出していますが、これをゆくゆく100本ほどにしたいです。
unnamed2(データ提供:CuRAZY)
大熊 ハイペースですね。しかし現在はコンテンツを内製せずに拾ってきていますよね。

伊藤 ニュース記事って基本的にどんどん消費されていくフロー型ですが、「笑い」とか「動物」のコンテンツって陳腐化しないんですね。突然シェアが再燃したりします。そういったものを上手くタイトルや見せ方を変えて使い回し、ストックしていってます。

大熊 「コンテンツを創らず、メディア内でぐるぐると循環させているだけだ」バイラルメディア全体に対して、そういう批判は考えられます。
今はとにかくトラフィックを稼ぐ、ユーザーを集めるという段階だと思いますが、「その先」では何がしたいのか。ぜひお伺いしたいです。

伊藤 そうですね、今はユーザーのアセットも、コンテンツのアセットもないです。まずユーザーに関しては、アプリ化することで定着を図ります。

そしてコンテンツに関しては、どんどん独自のものを創っていきます。我々の最終的な目的は笑いを「再現」することです。
画像や動画に限らず、「CuRAZY」発のゲームを創ったり、色々楽しめるようにしたいんです。

ユーザー参加型のCGMもCuRAZYとの親和性を見ながらいくつか展開していきます。ケータイ小説ではDeNAのエブリスタがやっているような仕組みですね。

また、吉本と提携して、独自コンテンツを作っていきます。吉本サイドからすると、「ネットでウケる人」っていうのがYoutubeやニコ生から素人で出てきてて、悔しい部分があると思うんです。そこで、うちと組んでネット発の芸人を作ろうとしています。

これらの根底にあるのはやはり、「スマホ時代の娯楽メディア」として確立したい思いです。

大熊 まずユーザーを集め、そこから様々なコンテンツを生み出していく、幅を広げていくというやり方はまさにBuzzFeedですね。そのBuzzFeedですが、エンタメをやりつつも、ピューリツァー賞を獲った人のチームで調査報道を始めましたよね。そういったことをされる予定はありますか?


伊藤 調査報道1割、ドラマ・エンタメ9というのがBuzzFeedのコンテンツの内訳ですし、テレビもこれに近いんです。これがユーザーが満足する比率なのかなと思っています。うちもそのあたりを目指していきます。

「メディアとしてのバランスを保ちたい」という思いがあるからです。


大熊 お話を伺っていて、「笑い」への並々ならぬこだわりを感じますが、そこまでこだわるわけってなんでしょう?
 

使える「笑い」を科学する

伊藤  「笑い」はあらゆることのとっかかりになるんです。「笑い」をうまく活かしたCMの効果は非常に高いといったことも言われています。
しかし現状、何がウケてバズるかといったことが中々事前にわからないですよね。テレビは頑張って視聴者にハッシュタグつけてもらってTwitterから声を拾おうなどとしていますが、ブラックボックスなわけです。そこで我々はきちんとデータをとって、打率を上げていこうと試みています。それが出来れば、収益性の良い記事広告も書いていけることになります。
バイラルメディア自体は10分で作れる という話もあり、参入障壁は低いですが、データに基づき科学的に笑いを生み出していくという点に競合優位性があると思っています。

大熊 これは映画の話ですが、大ヒットの「アナと雪の女王」も、脚本や演出において今までウケたものや時流をデータ化して、きちんと統計的にヒットを狙いに行った、と言われています。データに基づいてウケるコンテンツを創るという流れでは同じですね。
今、メンバーはどのぐらいいて、どういうバックグラウンドの人が多いんでしょうか。

伊藤 ライターは私を含めて2人 アプリ開発などするエンジニア2人と、インターン生5人の計9人でやっています。 これからはエンタメ雑誌やテレビ局でバラエティをやってた人・ソーシャルサービスの中毒者がほしいですね。特に、お金をかけて面白いことをやるノウハウを持っているのはテレビ局の人が圧倒的です。データで打率を上げることはできると言いましたが、「笑い」のツボを押さえるのは大変で、記事を外注するのは難しいんです。テレビ局の人材とネットでウケているようなYoutuberをマッチさせて、鍛えていければネットでしかできない面白いことをどんどんやっていけると考えています。 

来年はBuzzFeedとのたたかい

大熊 そこまで行くと、「スマホ時代の娯楽メディア」も夢ではなくなるし、非常にわくわくする話になってきますね。最大の山場になってくると思うのが、もともとCuRAZYがベンチマークにしていたBuzzFeedが来年日本に上陸することでしょう。
 

伊藤 東洋と西洋では「笑い」のツボも違いますし、国内の既存大手と提携するでしょうが、時間はかかるんじゃないでしょうか。それまでに、月間1PVほどの規模感にまで「CuRAZY」を成長させて、迎え撃ちたいです。

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今回インタビューさせていただいた伊藤新之介さんは弱冠25歳。元々は漫画投稿サービスで起業し、それがきっかけとなって海外で流行っているメディアについて詳しく調べだしたそうです。

見切り発車に近い形でスタートした「CuRAZY」ですが、初月から数百万のPVを稼ぐヒットとなり、今やバイラルメディアの枠組みに止まらない成長戦略がはっきりと描かれているように見受けられました。
今後どこまでエンタメメディアの勢力図を変えていくのか、非常に楽しみです。