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(瀧本哲史先生)

今日は、僕が所属していた団体「瀧本哲史ゼミ(通称Tゼミ)」について書きます。

 瀧本哲史ゼミでは、一言でいうと好きな上場企業を選んでその会社が「買い」なのか「売り」なのか(=投資判断)をプレゼンして、投資家の瀧本先生から評価を受けるという勉強会をします
これが、突き詰めて調べていくことの爽快感を僕に教えてくれました。

しかしちょうど去年の今頃ゼミの存在を知るまでは僕も「株」とか「投資」というとひたすらチャートを追っかけるうさんくさいもの、という認識しか持っていませんでした。
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実際に株のやり方には色々ありますが、瀧本ゼミでは「ファンダメンタル分析」といって、企業の中長期的な経営を分析する手法をとっています。

株価というのは大まかに言うと「その会社が将来にわたって生み出すキャッシュフローの現在割引価値」つまり将来予測に基づいて決まっているので、その予測が裏切られた時に上がったり下がったりします。
そのため、「ニュースで業績が落ちたといわれていたので売りです」とか「会社が出している業績予測によると利益が倍になるから買いです」とか言ってもだめです。それだけならば市場のみんなが気づいていて、即座に株価に織り込まれているからです。

瀧本ゼミでは特に、中小の地味銘柄を調べます。例えばソフトバンクのような誰でも知っている大きい企業は、プロの金融機関(=機関投資家)も多数目をつけていて、それらに情報収集力で勝つのは不可能です。しかし時価総額の小さいマイナーな会社なら、プロは大もうけができないからまだ注目していないこともあります。だから、学生でも特化して調べれば割安な銘柄が見つけられて勝てます。

実際にここでは僕が調べた「まんだらけ(2652)」という企業の発表までの流れを追ってみましょう。

まんだらけとは

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ずばり、「中古のオタクショップ」です。ここ以外では手に入らない手塚治の初版本などが100万円!とかで売られていたりしていて、「金に糸目をつけないオタク相手にしていてしかも競合がいないからめっちゃ儲かっているのでは?」と思ったので、まんだらけの「有価証券報告書」を調べました。

客を増やしつづけるうまい工夫

【図1】
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すると8年連続で売り上げが伸びていることが明らかに。2008年のリーマンショックで、トヨタなどの超・優良企業ですら赤字に陥ったというのにこれは凄いことです。「オタク趣味は不景気関係ない」という知見が得られました。

Amazonでポチる文化が定着して書店という業界が死につつある中で、こうして伸びているのも何故だろう?と思って店舗に赴いてみると、コスプレした女性店員が出迎えてくれました。全店舗で常にコスプレしているようです。
実際に中古品を売るときも、店員さんが無造作に仕分けるBOOKOFFなどと違い、職人さんがじっくり査定します。

まんだらけはこうした実店舗ならでは体験を売っているからこそ、「Amazonでいいや」とならずに客をよびこみ続けているといえます。また、アニメイトなどほかのオタクショップに寄ったお客さんも「まんだらけにもいっておこう」となるため、競合に食われてしまうことも少ないのです。

株価が割安なワケを探る

【図2】まんだらけ株価推移(2005/01~2012/12)
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ところが、優良な経営にも関わらずアベノミクス前までの株価は低迷していました。
ここで僕は「何らかの原因で不当に株価が低くついているので、そのボトルネックが解消されれば株価は爆上げするのでは」と仮説を立てました。

【図3】まんだらけの店舗情報

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そこで全国のまんだらけの出店状況を確認したところ、面白いことがわかりました。
2005年までは首都圏と政令指定都市を中心に出店が相次いでおり、それに併せて株価も上昇。
しかし06年以降は店舗の増床や移転が繰り返されて既存店の売り上げが改善しているだけで新しい店が出ていません。
さて、株価は将来的な利益を織り込むという前提を思い出しましょう。僕は「市場はまんだらけがもう新規出店できないと見越して、将来的に行き詰るのを織り込んでいるのでは?」と見当をつけました。

【図4】自己資本比率推移(2004~2013/6)
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更になぜ新規出店しないのかを調べたところ、経営の安定性を表す指標である「自己資本比率」が07年に急速に悪化したことがわかりました。05年までの新規出店ラッシュのつけで借金がかさみ、以降は財務の建て直しを迫られていたのです。しかし6年以上耐え忍んだ成果から、ほぼ出店ラッシュ前の水準に戻してきました。

ならばそろそろ新規出店が実現し、市場は「まんだらけの成長余地が広がった」として、株価を大きく上げるのでは?と考えて、実際にまんだらけのIR(株主からの質問に答える担当)に電話でインタビューをしてみました。
担当者は公開情報以上のことを話してはいけないことになっていますが、「仮定の話ですが、出店するとしたら場所はどこです?東北?」とか「新規出店できるかできないかといえばできますよね?」と根気よく聞くことで、どうやら2013年度末までに何か大きな動きがある、という感触を得ました。

得られたデータから仮説を立て、いざ発表

こうした調査に基づき、僕は「まんだらけが新規出店で株価爆上げ」というストーリーで2013年6月、ゼミで発表しました。
(この他にも価格付けの巧妙さや競合との立地戦略のうまさ、中古品小売業界全体の動向なども分析して、大体50~60時間ぐらいかけて資料を完成させました。全様が見たい方は【2652】まんだらけ 推奨 買いから)

すると……

【図5】
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2013年度末決算で、物流倉庫の建替えが発表。新規出店ではなかったもののこれはまんだらけの拡大余地を伸ばす材料といえます。日経平均全体が落ちこんでいた時期にも関わらず、これを見越した株価は3300円程度から一時3900円程度にまで伸びました。

しかしこの発表では、最高評価である瀧本先生からの「買い」判断は得られませんでした。「新規出店の確証は得られていない」「本当に出店した地域に潜在的なオタクがいるかの裏づけがとれていない」ことが理由です。

発表時には他にもゼミ生から「在庫の処理はどうしているのか」「実店舗で催されるイベントが集客につながっている定量的な根拠はあるか」などの激しいツッコミが浴びせられました。少しでも発表のロジックに綻びがあったり裏づけが取れていないものに対しては容赦ない場だからこそ、緊張感をもって徹底的なリサーチに臨めます。
完全なド素人から始めて、3ヶ月でこの程度の分析はできるようになったのはそうした環境のおかげです。

幸い、その後2回ほど発表で「買い」の評価をもらったり、ゼミの企画で投資家の藤野英人さんを審査員に迎えてプレゼンする機会をいただきました。
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(藤野英人さんのFacebookより)

こうした投資分析は、簡単な入門書を1,2冊読めばもうすぐに実践できるので、非常に敷居が低く「仮説を立てて公開情報を分析することで、誰も知らなかった事実を発見する」「あくなき姿勢で取材して情報をとる」ことの楽しさを知ることができます。
それによって得られる基礎的なリサーチ能力は、コンサルティングファームの実務などにとどまらず、自然科学における研究や取材活動などインテリジェンス全般のさわりにもなるはずなので多くの人におすすめです。

僕はこの上に「見つけ出した事実をより面白く、たくさんの人に伝えたい」というもともとの気持ちが加わって、ジャーナリスティックなものを志しているこのごろです。