前編では、書き起しサービス「Logmi(ログミー)が立ち上がった経緯と、著作権問題への姿勢についてお伝えしました。後編ではその現状とこれからの可能性を探ります


経済メディアなのは結果論

ーー現在のログミーは、ビジネス系の記事がとても多く、経済メディアの「NewsPicks」などでもよくランキング入りしています。経済系はPVが稼げるからといった理由ですか?

 

 著作権関連がクリアに近く面白い動画を書き起していったら、結果的にビジネス系が多かったというだけで、もともとビジネスメディアにしたかったわけではありません。

    IT起業家向けのイベントであるIVSと公式パートナーになったことで、ビジネス系のコンテンツがよりいっそう増えることとなりました。読みたいもの・読みたくないものがはっきりしているハイリテラシーなユーザーさんが多く集まることとなったので、今のログミーはこのままの方向性で育てます。

    その上で、例えばスタバで行われるガールズトークをひたすら書き起こす「ガールズLogmi 」とか、横展開で別なものも作っていきたいです。

割りにあわない「記者会見書き起し」もやるワケ

 ただ、今のログミーでも経済系以外で意図的に注力している対象に、記者会見の書き起こしがあります。

 本来、発言の内容を全文書き起こせば誤解は生じようがないはず。でもメディアは自分たちの伝えたいように切り取って編集することがあります。そうした危険から、発言者を守りたい。

 全文ログを作れば、通信社よりリアルな生の情報に、一般人でもリーチできるようになります。私はこれまで編集の仕事もやってきましたが、ある意味、ログミーでは一回編集というものを否定してみよう、という考え方から出発しています。

 

 それに記者会見の場には大勢の記者が押し寄せますが、全員が同じ場所にいて同じようなことを聞き、同じような質問をするのは資源の無駄だという問題意識があります。「どうせログミーが書き起こすから、そこは任せて別の人に詳しいことを聞こう」といったように記者がより人間にしかできない創造的な作業に集中できるようになればいいと思っています。

 そういったことをいわばログミーの「裏テーマ」として掲げているので、PVは多くとれませんが、記事の2割程度は記者会見の書き起しです。

ログの「解析」という役割

ーーログミーはメディアでありながら、メディアの役割である「編集」を一度否定してみるというのはとても面白いです。

 

 「ログ」の可能性って、メディアだけじゃないんですよ。僕が元々いろんなメディアの立ち上げ人だったから、Yahoo!ニュースと提携したり、見出しやタイトルをつけて「記事」にしたりとメディアっぽくなっているというだけです。余計な小見出しもつけない単なる議事録のようなものでもアリなんですが、現在のネットの仕組みではメディアにしたほうがより多くの人に届くからしているというだけに過ぎません。

 

ーーそれでは、ほかのあり方とは。

 

ログミーには3つの役割があると思っています。

 

ログを作る。

ログを拡散する。
 
ログを解析する。 

 このの部分にも力を入れていきたいんです。長いログのどの部分がシェアされているのかを解析すれば、バズる言葉の法則も分かるでしょうし、そのログの要点もすぐわかるようになります。

そうすると、例えば記者会見の書き起こしからどこが引用されやすいか 何百個も解析してマーケティングデータをとっていくうちに、「ウケる選挙演説の作り方」なんてものが作れるかもしれません。

そしてそのログを論文として引用したりニュースで引用したりと自由に使えるようにしたいです。

次の展開は「CGM

ーー最初に取材を申し込ませていただいた昨年7月頃に、リニューアルに向けて準備中とおっしゃっていました。それは解析を増やしたり、経済以外の分野でのログミーを作っていくということでしょうか?

 

 いえ、それとはまた別です。利用規約をちゃんと定め、今のログミーをよりクリーンな方向へもっていきたいというのが1つです。

 もう1つ新しいのは、誰でも書き起こしを投稿できるCGMを作ろうと思っています。

 昨年のソチ五輪のとき、森元首相が浅田真央ちゃんをdis って炎上 という出来事がありました。あれって実は福岡市の講演会での発言なんですが、あれも全文を読むとまた違った印象を受けます。そういったものを書き起したいんですが、編集部で全部集めるのは不可能です。それで、地方の協力者を募りたいというわけです。

 ほかにも例えば沖縄の基地問題については、正直、地元の新聞が正確に伝えていないケースも多くあるかと思います。本当は誰が何を言ったのか正確に伝える「本当の議事録」を人力で作れないか、試してみたいのです。

 

ーーCGMにすると、違法な書き起こしがアップされるなどの問題も起こりそうですが、対策はありますか?

 

 どういうCGMになるかは、そのメディアに醸成される「雰囲気」次第だと考えています。芸能人の発言をまとめるぐちゃぐちゃなサイトになるか、先ほどの政治の問題や、大学の講義を書き起こすような公益性の高いものになるかは、雰囲気作り次第です。それこそがプロデューサーの仕事だと考えています。

 

インタビューの全体を通して語られたのは、とにかく「ログ」の可能性を広げたいという強い思いでした。名うてのメディア・プロデューサー川原崎編集長のもとでログミーが今後どんな成長を遂げるのか、楽しみです。