メディア・クエスター

メディア・コンテンツ業界に関する発信(海外やビジネスモデルへの言及が多い) 連絡はqumaruin(あっと)gmail.comまで。

2014年06月

こんにちは、大熊(くまりん)です。
先日久しぶりに大学に行ったら、経済学部3年の後輩たちが不慣れなスーツを着込み慌しそうにWebテストを受けたりグループディスカッションの練習をしていました。
今が外資系の大半と日系の一部が開催するサマーインターン選考まっさかりです。
大手意識の高い学生にとっては、日系就活解禁を遅らせたのは長期化を招いただけですね。

「新卒で新聞社に就職」に対して、就活してないメディア人志望の学生が思うこと

先日こういう記事を書いたのですが、より一般化して就活の話をします。今日はメディア論関係ないです。
僕の主張は「行きたい会社が明確な人と、超優秀ではない人は正攻法の就活をするな」です。

何故なら、無闇に死ぬことになるから。

どういうことか。最近は批判も強いですが、「リクナビ」や「マイナビ」が大量のエントリーを煽ってきます。
リクナビ
(デイリーニュースより引用)
結果、大手企業では倍率数百倍も珍しくなくなったのは衆知の事実です。これは何を引き起こしたか。

「そこそこ優秀」な学生は大変

内定が出まくる人と中々でない人に二分したのです。会社によって「優秀な学生」「欲しい学生」の定義は違うものの、何か秀でた人は余所でも秀でていると評価されがちで逆もまた然り。
で、全然でない人はどうするのかというと、とにかく受けまくる。実感ベースで、東大経済学部生の5~6割が該当します。20~30社は当たり前。頑張って3000字書いたESも数社からは切られる。何回もOB訪問繰り返し、面接の練習しまくる。そして何とか1,2社に内定する。
まあ、しんどい流れなわけです。メガバン志望者なんか、平日の昼間でも何回もリクルーターから呼び出されていました。それでも最後は電話一本で落とされたりします。
結果、かろうじて受かった会社に対する忠誠心が物凄く高くなり、「オレたち、すごくね?」とか思うようになったり。

意外に知られていないが、内定者に強烈な選民意識と自己陶酔感を与えて正社員メンバーの一員として4月1日に迎え入れることも、採用セクションの重要なミッションだ。

就活コンサルの城繁幸さんが言うようにこれもまた企業側の戦略の一環です。内定後の満足度が高いのはいいことでしょう。しかし入社3年後の離職率は30%という時代で、バカ正直に必死に選考フローに乗ることは、果たしてそれでも合理的ですか?

運まかせの面接を受けるという巨大なリスク

そして日系大手採用で最大の勘所となることの多い面接では、「大学時代に頑張ってきたこと」がすさまじい勢いでコモディティ化します。
途上国にボランティア行ったとか、世界一周したとか、体育会で全国大会出たとか、サークルの代表だったとか。
さんざ言い尽くされてるから「またか」と思うだけで、よくよく考えると本当にやってのけたならどれも凄いわけです。が、10000人も集まるとそういう人が大量に出てきちゃう。何もやってこなかった学生も真似たり盛ったりしてくるので、ちゃんとやってた学生にとって損。本当は彼らの4年間に、価値のある物語があるのに。これは本当に悲しいです。
結局「頑張ってきたこと」も「御社で成し遂げたいこと」もほとんど誰も差別化できないから、面接官との相性とかその場のちょっとしたノリで合否が左右されてしまいます。

面接官「あなたをモノにたとえたら?」学生「はい。消しゴムです」お互いが真剣に迷走中!「人物本位」の就活、こんなにヒドいことになっていた

更に、企業側は無理やり差をつけようとこんな無意味な質問も飛ばしてきます。しかも、最初の段階では人事でもなんでもない、面接初心者が担当してたりもします。

学生同士のグループディスカッションによる選考も、グループにわけのわからない持論を展開して主導権を握ろうとする通称「クラッシャー」がいると議論がぶっ壊されて全員落ちるなんてこともあります。もちろんクラッシャーをなだめつつ議論をリードできればそれにこしたことはありませんが……。

こちらからは面接官も、同じ面接グループの学生も選べません。

だから結論、「面接」に正々堂々と行った時点で負けです。

「コネ」を作るべき。どうやって?

じゃあどうするべきなのか。答えは「コネをつくって、決定権のある人に営業しろ」です。
コネという言葉に卑しい響きを感じるかもしれませんが、実はとてもポジティブな言葉であることを説明していきます。
まず例をあげましょう。

君に友だちはいらない
瀧本 哲史
講談社
2013-11-13



瀧本哲史さんの著書「君に友だちはいらない」で、物議を醸した岩波書店の採用方法が紹介されます。
曰く応募資格に「岩波書店著者の紹介状あるいは岩波書店社員の紹介があること」を明記。
この方式には非難が殺到したそうですが、瀧本さんが解説しているように、編集者志望だというのなら作家の1人ぐらい引っ張ってこれないと話にならないのは当然とも言えます。

これって多くの職種に当てはまりますよね。営業志望なら、顧客に飛び込み営業できないようでは(ry。
企画志望でも、お偉いさんを直接説得できるプレゼン能力がないようでは(ry。
業界によっては、例えば銀行なんかは、「忠誠心」が大事な要素だからあんまり効果がないし、官庁は民間のように柔軟な意思決定はできないから難しいというのはあるでしょうが。

ドワンゴ・川上量生会長 「受験料徴収」の真意 大量の“廃人”を生み出す「就活」
大量にエントリーして1つも受からなかったら、説教をしますね。「なぜ早く俺に相談しないのか」と。入りたい会社があるなら、父親である自分にそこにツテがないかを確認するのが頭のいいやり方だと思います。大量にエントリーするなんて、何を勘違いしているのか……。自分の力を過信してますよね(苦笑)。

 正々堂々と闘い、玉砕する弱肉強食の社会が「美しい」とは、僕は思いません。

自社のエントリーに受験料を課したドワンゴの川上会長もこう言っています。
勿論、コネなんて最初は持っていない人が大半でしょう。じゃあどうすればいいか?いきなりFacebookでメッセージの絨毯爆撃とかだとレスポンスは期待できません。取材の合間などを狙って飛び込み営業しに行くのは一つの手です。
もしくは、自分の知り合いの中で最もコネのありそうな人に相談する。その人に紹介してもらった人を辿って、また辿って……とどうにかアポを獲得する。

もちろんOB訪問の門戸は広く開かれています。電話一本かメール一通で、若い年次の人には会いに行けます。
商社などでは、OB訪問で見込みあると見られたら上に報告してもらえるそうです。
でもそれよりも、がんばって人事部長や役員、社長に会いましょう。採用に直接影響を及ぼせるこの人たちに「面白い」と思われることが大事です。


(次のページに続きます:アポをとって実際に何をすればいいか?そもそも、現実的なのか?)続きを読む

佐藤慶一さんという若手の編集者がいます。
彼は講談社の「現代ビジネス」の編集者としてフルタイムで働きながら、海外メディアの最新の動向を紹介するブログ「メディアの輪郭」は、多くのメディア関係者たびたび参照するほどです。
毎日のようにブログを更新し続けながら、更に「トジョウエンジン」というNPOメディアでも編集を務めている佐藤さんは1990年生まれの23歳。
さまざまなメディア業界人が「期待のホープだ」と目にかける彼はしかし一見物静かな青年です。
その内側にいかなる情熱の炎があり、どうやって彼をそこまで突き動かしているのか、そして業界と自分自身のどういった未来を見据えているのか。インタビューさせていただきました。 
佐藤さん

メディアによって解決したい問題がある

大熊 「メディアの輪郭」で海外メディアの動向をいつも学ばせてもらっています。フルタイムで働きながら、どうしてそこまでメディアへ愛情を注いで紹介し続けられるのか聞きたいです。

佐藤  メディアに深い関心を寄せる理由は3つあります。1つ目は、僕が佐渡島という地方出身だったことです。大学進学と同時に都会に出てきて、情報発信に関してものすごいビハインドを感じました。佐渡といえばトキや金山メージしかなくて、本来伝わるべき素晴らしいものが何も伝わっていなかったんです。このままでは観光地としてもやっていけないだろうし、何より自分の地元の価値がもっと伝えたいと感じたんです。

大熊 確かに、「佐渡島」と聞いて思い浮かぶのはやっぱりトキですね……
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佐藤  2つ目は、大学3年の時にミャンマーの難民が多く生活するタイの難民キャンプに行き、そこでもやはり現地の情報が伝わっていない、情報の格差があるという問題に直面したことです。もっと正しく伝われば問題の認知や解決は早まるんじゃないかと思いました。3つ目はそうした経験から関心を寄せるようになったNPONGOの活動を伝えるメディアの問題です。実は日本には約5万の団体と約100万人の関係者がいるんですが、その規模に見合うほど大きく彼らの活動を伝えるメディアはありません。

大熊 地方・途上国・NPOといった「周縁的なもの」、本当は価値があるのにそれが伝わっていないところに目を向け、メディアによってその問題解決をしたいと考えられているわけですね。

佐藤  そうですね。地方メディアについては佐渡島に帰った時にやろうと思っていて、途上国については「トジョウエンジン」で、それからNPOについても、イケダハヤトさんが共同代表しているNPOメディア「テントセン(休止中)」に関われているんですが、現状にまだまだ満足してないです。
ウェブに適したもっと新しい形で表現すれば、メディアの力でこれらのテーマをもっと広められるだろうと
それで、進んでいると言われている海外メディアの動向を追うようになりました。メディアを追っている活動がメインのように捉えられることもありますが、根本的には地方・途上国・NPO/NGOについての発信をもっとよくしたいという思いがあります。
 

「まだまだ足りない」 

大熊 実際に「メディアの輪郭」はたくさんの業界関係者が読んでいますよね。海外メディアについて発信しつづけて気づいたことはありますか?

佐藤  そうですね、案外、メディア業界の発信をしている人が少ないということですね。それから、まだまだ知識量や実践量が全然足りてないとはいつも思います。NPOやローカルなど情報発信がなかなかうまくされていない分野をやろうというんだから、他の誰よりもメディアについて詳しくならないと、という気概でやっています。

大熊 そこまで頑張っていて、まだまだ足りないという思いなのは凄いです……。現在は講談社の「現代ビジネス」でも編集者の仕事をなさっていますよね。

佐藤  ここは、編集者としてのスキルを磨くのに最適な場なんです。紙のフィールドに長くいた先輩編集者や、ディスカヴァー・トゥエンティワンという出版社で若者に向けた新しい働き方を提案する「U25」シリーズを手がけた徳瑠里香さんという、家入さんやはあちゅうさんをプロデュースした尊敬する編集者が先輩にいます。編集者として2つのことを意識していて、1つは問題の発見から解決までに関わること。もう1つは才能を発掘してそれを流通させることです。
編集者としてのそうした能力を磨きつつ、現在ビジネスマンを中心に読まれているな現代ビジネスを、もっと若い人に読まれるようにしていきたいというモチベーションもあります。

大熊 就活の連載とか、めっちゃおもしろくてウケましたもんね。

「就職、ほんとうに残念です」 会社に入るなんてマジでつまらない! イケダハヤト×小川未来【前編】

データジャーナリズムを学んでNPOの発信に活かす

大熊 話は変わりますが、いつも「メディアの輪郭」で取り上げられている数々の海外メディアのうち、好きなところで働けるとしたら、どのメディアでどういう仕事がしたいですか?

佐藤 これは難しい質問ですね!でも、他の人たちにもぜひ聞いてみてほしいです。うーん(しばらく考えて)
Vox mediaかなぁ。これは、 WIREDVOGUEなどのメディアを出しているコンデナスト社に技術の力を取り入れたイメージで、デザインがとってもイケてます。ワシントンポストのコラムニストが移籍した理由にもなった素晴らしいCMSがある、というテクノロジーの強さもあります。技術者と一緒にできるメディアは本当に魅力的です。データジャーナリズムやビジュアライゼーションの手法を学べることが、将来的にNPOメディアを立ち上げて運営していく際に活かせそうです。
vox
そうした意味では、NPOをテーマに据えながらデータジャーナリズムの取り組みが先進的で、何度もピューリツァー賞を獲っている調査報道メディアのPropublicaも気になります。
 

メディアはあくまで「手段」 

大熊 佐藤さんの根本的なテーマと繋がっていますね。最近日本でも大流行している「バイラルメディア」については、TwitterFacebookで拡散させ大量のトラフィックを稼ぐ手法は評価しつつも、メディアとしてどういう価値を生み出すのかには懐疑的なのかな、と見受けられますが。

佐藤 そうですね、僕はメディアとは何かを伝えるため、何かを実現するための手段だと思っていて、とにかく流通させることだけに主眼を置いたバイラルメディアの中にはその手段が目的化したものもあるなと感じます

でも手段として優れているのは確かで、一番アメリカで成功しているバイラルメディアである「BuzzFeed」は調査報道をしていますよね。このコンテンツは、BuzzFeedが主に扱っている「猫画像」とか「クイズ」のような軽いコンテンツの隣に、本当に軽く配置されています。
ばずふ

バズってる猫画像を見るために集まった人が調査報道も読んでいき、硬派な記事でも多くの反響が得られるというのは重要ではないでしょうか。
逆に朝日新聞の「吉田調書」のスクープなどはコンテンツの質も圧倒的ですが、ほぼ何もないところからバズを起こすという意味では大変で、採算が合わない可能性も高いわけですよね。
そういう意味ではBuzzFeed的な"コンテンツを出す軽さ"って大事だと思います。 
 

GunosySmartnewsは使ってない

大熊 「どう伝えるか」より「何を伝えるか」があくまで最重要。でも、伝え方が広まったことで出来るようになったことも確実に増えていますね。
最後に、佐藤さんの情報収集の仕方についてお伺いしたいです。「メディアの輪郭」で紹介されている海外トレンドに限らず、国内のメディア業界の記事もすばやく見つけてきてコメントされているイメージです。
Gunosy
Smartnewsは使っているんですか?

佐藤 GunosySmartnewsはスマートフォンに入ってないです。注目しているメディアやジャーナリストをまとめたTwitterリストを使ってニュースを仕入れています。まだ自分でキュレーションした方が質のいい情報が集まっている気がします。

大熊 そうなんですか。でも、NewsPicksはよく使用されてますよね。
 

佐藤 NewsPicksについてはニュースアプリというよりはコメントコミュニティと捉えています。

このまま荒れないコメントコミュニティが作れると凄いですね。

(了)


彼がメディアを追い続けるとってもアツい動機が分かり、業界観や実際のニュースの仕入れ方なども明らかにすることができたインタビューとなりました。
 

withnews 

先日、朝日新聞が新サービス「withnews」を開始しました。
「ブラジルW杯はアフロに注目!」とか「渡嘉敷島にアザラシ現る!もちろん名前は…」
などなど、とてもライトで親しみやすいコンテンツが並んでいます。
長文が大半なものの「記事インデックス」で内容が3行に要約されているところなどは、さながらlivedoorニュースですね。
性差別
(withnewsよりキャプチャ)
この新メディア立ち上げを主導したのは、先日取材させていただいた記者の奥山晶二郎さん。
とにかく新聞社のコンテンツが若者に読まれない現状を踏まえ、若者に読まれることに主眼を置いて作っていると仰っていました。

ただ、ネットでよくある軽いニュースまとめと根本的に違うのは、「フカボリ」をリクエストできる機能です。読んだ記事について、もしくは全く新たに「これを調べてほしい」というのをリクエストして認められれば、プロの記者が実際に調べてくれるのです。亀松太郎さんが次々に興味深いリクエストを投げかけていますね。
亀松さん
(withnewsよりキャプチャ)
リクエストに対して「ホって」という名のいいね!機能もついており、共感が可視化されます。
そもそもサイトのコンセプトに
 あなたと一緒に “気になる”を解決するサービスです。日々のニュースで“気になる”ことはありますか?あなたのリクエストをきっかけに新聞社が一生懸命もっとフカボリ取材します。 いろんなメディアも巻き込んで一緒に “気になる”を解決していきます 
とありますね。
朝日の人は、一記者から社長までみな「これまで新聞社のニュースはコース料理でしかなかった。これからはアラカルトを提供していく」という比喩を使うんですが、「客が料理の味付けに注文をつけられる・まったく新しいメニューを提案できる」というのが今回のポイントです。
または「プロフェッショナルなYahoo知恵袋」と考えてみても面白いかもしれません。

これって、どーなんでしょう。 
動画コンテンツの書き起こしサイト「ログミー」の川原崎さんは懐疑的です。

「メディアはもっと読者とインタラクティブになる必要がある!!」というのはどこのメディアも最近声高に言ってることですが、現状その工夫の主戦場は「コメントスフィア」と「クラウドファンディング」です。

NYTとWashington Post、新たなコメント欄の開発で協力

とにかく読者にもっとコメントしてもらい、もっと本音を語ってもらおう、コメントもコンテンツの一部として成り立つような設計にしようという流れがまず1つ。

世界最大のクラウドファンディングサイト「キックスターター」が「ジャーナリズム」カテゴリーを設置

もう1つは、ジャーナリストが「このテーマを追います」と宣言して出資を募り、共同のプロジェクトとするクラウドファンディング活発化の流れです。 昔から寄付金で活動しているフリーの記者はいたし、ジャーナリズム×クラウドファンディングは非常に相性が良いです。

これら2つはあくまで「取材テーマの設定」から「取材の実行・アウトプット」まではメディア側が保持しています。
一方withnewsは一部で「取材テーマの設定」も読者に渡してみようという試みです。


ECサイトのインバウンドマーケティング元年がやってきた 

ECの世界では、企業が消費者に商品をPUSHしまくるのではなく消費者が商品にPULLされていくインバウンドマーケティングが流行りつつあり、どことなくこれと似ています。
 
読者の求めている記事を書く。メディア側の価値観の押し付けでやらない。と言えばいいコンセプトに思えますが、またレストランの喩えに戻ると「高級店のつもりで来たのにお客の要求で色んなB級グルメをやりだして、何がなんだかわからない」「食べたかった"シェフのこだわり"の中身が、素人客が提案した原料と味付けになってしまった」
になりかねない。多数のユーザーに委ねるCGMはクオリティコントロールがめちゃくちゃ難しいです。
(一方で「編集部ゴリ押し」というコンテンツもあるぐらいで、バランスをとっていく姿勢はすでに伺えますが。)

色々と書いてきましたが、気になることをプロの記者が調査して書いてくれるサービスというのは現状とても使い勝手が良さそうなので、僕もどんどん活用していこうと思います。
良くも悪くも、withnewsのチャレンジは「新しいジャーナリズム」の1つの形になり得るでしょう。

ただ、まだまだ僕自身のメディア運営の経験が浅いため、読者との距離感はどこまで詰めるべきか、わからないことも多いです。
メディアはどこまで読者に寄り添うべきだと思いますか? 書き手・作り手・読み手からの意見をお待ちしております。


追伸
週刊文春デジタル、読者からスクープ情報を募集する「文春リークス」を開始
週刊文春も「取材テーマの設定」を外部から取りに行くことを発表。ブラック企業の内部告発など、この形態だからこそ取り組めるテーマは沢山ありそうです。
長くなり・ごっちゃになることを避けるため今回は扱いませんでしたが、次回文春リークスに関する記事も書きます。

こんにちは、大熊です。
かねてから書いてきたとおり、僕は大学4年生ですが就活をせず、来年1月からアメリカの現地新興メディアに取材する準備を進めています。そんな僕が

「ジャーナリスト志望なので新聞社に就職しようと思っています」「何を言っているんだ、お前は」

というイケダハヤトさんの記事について個人的に思うところがあったので、表題について持論を述べます。
 
僕は、人の面白い部分を発掘して伝えること・人と人とを出会わせて面白い化学反応を起こすこと、自分自身が強く発信することが大好きです。それが一生の仕事にできたらベストです。
特に「瀧本哲史ゼミ」で身に着けた投資分析の基礎と徹底的に調べる姿勢を活かし、経済分野で面白いメディアを立ち上げる起業家ジャーナリストになりたいです。

そうした僕は、短期的にこれからのメディア業界で3つの動きが起きると考えています。

まず1つ目は、「新卒でマスコミに入る人材の質の劣化が進む」。僕と同期でクリエイティビティやリーダーシップ、教養に優れた友人は誰もマスコミに入りません。僕よりも読書家であったり書くのが好きな奴でも斜陽なメディア業界を避け外資系コンサルや商社・銀行・保険に流れます。
優秀な人材が集まらないことは大手全体の危機でもある一方、僕個人にとっては活躍できるチャンスが広がっているとも言えます。

2つ目、これが最大ですが、「個人で活躍できないなら決定的にだめになる」
何故ならたぶん、待遇において格差が物凄いことになるから。今は同一の新聞社・出版社なら、イケててもイケてなくても給料はせいぜい倍しか差がつかないでしょう。
しかし例えばコミックの話ですが4000万部売れた「進撃の巨人」の編集を担当した人と、数万部も売れない漫画しかプロデュースできない編集者の能力差は倍では済まないはず。
これまでは40代で日の目を見ることになる往年の編集者なんていっぱいいましたが、今後は減っていくと思います。
なぜならこれまで出版社も新聞社も終身雇用でがっちり守ってじっくり育てられてきたけど、そんな体力はもうないからです。
そして、1万部の作品しか手掛けられない編集者を100人雇うより、1000万部売れる編集者にその100人分の給料を上げたほうが合理的になるので、一流の編集者の待遇はむしろ総じて上がると考えます。

新聞記者にしても同じで、「吉田調書」のようなスクープをとってこられるスター記者もいれば、叩かれてもしょうがないのではと思うような記事しか書けない記者もいて、その差は非常に激しいです。
新聞社には盤石の不動産収入があるといっても、今後15年で世代交代が起きて決定的に新聞が読まれなくなり、経営が傾いたり今の形での「新聞」はなくなる可能性は十分あります。

でも全国紙の新聞社の記者になると、20代の残りの大半を地方で過ごします。
初めにやることは「サツ回り」といって、検察に夜討ち朝駆けして事件報道の情報をとってくる仕事です。
これが「嫌」「ダメ」とは思いません。むしろ取材力をつけるには最適なブートキャンプでしょう。
実際、いま大手新聞社の30代や40代で面白いことが出来ている記者たちは中途を除いてその経験者です。
しかしやはり新聞社で長くやっていくことを前提としているから、下積みを終えたらもう新聞社に余力がなくなっており、既に抱えている一線級の記者以外は切られるという事態は普通に起こり得ます。非常にリスクが高い。

3つ目は、「ネットメディアの質が停滞していた流れが変わる」。主因はスマホの普及に加え、大手から独立してメディアを立てる「起業ジャーナリズム」が日本でも少数ながら起きつつあり、試行錯誤が行われてることです。この変革期の潮流に乗って活躍できれば、個人としても一気に道が開ける可能性が高いです。一番わくわくしているのはこの流れです。

要するに、今後1、2年で自分が携わったメディアをきちんとヒットさせることもできないなら、メディア人としてやっていけないのです。
もうすでに、ネットの世界では「しょうもない記事書いても時給300円」みたいな時代が来ています。いくら表現することが好きでも、僕はそれで食っていこうとは思えません。

だからもしメディアを今後1年間やってみてダメだったら、諦めて事業会社のサラリーマンを目指すつもりです。

しかし実際、いきなりフリーランスで誰にも依らず己のメディアをやっていくぜ!というのも確かに難しいところです。じゃあどうするのか。

僕が出来ることは、「個」として自分のビジョンをぶち上げ、おもしろいことにチャレンジすることで一線級のメディアマンに「こいつは生意気で未熟だけど、投資してやる」と何とか思わせることです。

一流の編集者と一緒に仕事させてもらって鍛えてもらえる環境を自分の手でたぐりよせられれば、新卒で大手の出版社や新聞社に入社してブートキャンプ的に鍛えられる以上の経験とスキルがつくのではないかと考えています。

近いことを実践しているのが、僕のブログでも何回か取り上げてきた「現代ビジネス」編集者の佐藤慶一さんです。grennz.jpでのインターンで優秀なウェブメディア編集者としての素質を開花し、その実績もあって講談社で働いている方です。他人についてあれこれ詮索するのは行儀が悪いですが、佐藤さんが何かメディアをやろうと思ったらついてくる人は沢山いるだろうし、引く手も数多だと思います。

まずは「NYの新興メディア取材・インターンでメディアの未来を探る」という企画を最大限に成功させるべく努力することを進めていきます。来月からはNewsPicks編集部という新しいバイト先に勤めることになったので、そのチャンスもモノにしていきます。

先月一周年を迎えたハフィントンポスト日本版。順調にユーザ数を伸ばし、健全なリベラルを伝えていく独自の地位を築くのに成功しているように見えます。
松浦編集長に、ハフポスト日本版の未来と彼自身の未来について語っていただきました。松浦さん

もっとライフスタイル系を充実させていく

大熊 月間のユニークユーザが1000万を突破するなど、順調に伸びていますね。1年やってまだまだやれてないと思ったこと、次の1年でやっていきたいことを教えてください。

松浦  まず、この1年間やってきたこと自体に満足していますね。細かくいえばやれてないこともそれなりにありますが。そして次の1年ですが、これまで子育てや働き方の記事は特に読者に興味をもってもらえましたから、今後さらにライフスタイル系を増やしたいと考えています。

大熊 団塊ジュニア世代というターゲット層にうまくリーチできていますよね。しかし何となくハフポスト日本版は、その層に限らず広く「ネット発のマスメディアだ」「新しいメディアだ」と期待されている部分もあると思うんです。
今後、もっと読者の対象を広げていく予定はありますか?

松浦 もちろん、コアとなる読者層は団塊ジュニアですが、じゃあ他は一切無視するといったゼロイチで語れる話ではありません。


著作権の問題やTPPの参加是非についてもハフポスト日本版では扱ってきましたが、これらの記事は共通弁として幅広い世代に読まれました。
どういうコンテンツを出していくかは、さらに双方向にユーザの声を聞きながら届けていきたいと考えています。

大熊 ユーザの声はどのようにして聞いていますか?記事へのコメントが掲載前に検閲されるやり方については、賛否両論ありますが……
コメント
(塩村議員へのヤジに関する記事へのコメント欄)

松浦 コメント欄で読者の声が閉じているのではなく、意見発信の場としていきたいという考えを持っています。ですから、単にネガティブであったり、他者をあらがう意見は載せていません。我々はこれを空間編集と言ってます。
意見発信といってもコメントに限らず、facebookでいいねを押してもらう、そのことで記事がもう一人の読者に拡散されているという形もあります。
そんな風に「読者がもう一人の読者を連れてくること」をやっていきたいです。

データ分析はある種「文学的」

大熊 ハフポスト日本版では、どこのどんな人に伝わったのかなどのデータ分析が盛んだと聞きます。しかし編集部には、出版社出身の方だったり、データ分析のプロではない方も多くいらっしゃると思います。どうやってデータを活用しているんですか?

松浦 大事なのは「何故この記事は1万PVほどウケたんだ?」といった仮説を立てることで、それを主観だけではなくデータを用いてやるだけです。意外な指標に着目して「このポイントが響いたんだ」などとストーリーを導くことは実はある種文学的な要素も必要だと思っています。

大熊 松浦さんご自身は、前職のライブドアやグリーといったIT企業での経験が活きていますか?

松浦   仮説の立て方ではそうですね。いかに客観的になるか。もう1人の自分に見つめさせるようにしています。「なんでこの記事が読まれないんだ?」っていつまでも言っているようではダメですね。

大熊 ハフポスト日本版には個人ブロガーのみならず、新聞社の方も寄稿されています。しかし新聞記者も最初はウェブの作法に対応できず、書いた記事が全然読まれないこともあると聞きました。そこから対応できる人、できない人の違いは何ですか?

松浦   ウェブと紙では、ソフトボールと野球ぐらい、似ているけどルールが違うところもあります。そうした微妙な変化に対応できるかですね。今はメディア全体が変わっている最中でもありますし。

松浦さんは「戦略家」ではなく「戦術家」

大熊 メディア全体の変化を、ハフポスト日本版が担っていく部分も大きそうですね。松浦さん個人の目標は何かと以前お伺いした時に、「よりたくさん人を楽しませることだ」と仰っていました。それは量においてですか?質ですか?

松浦 楽しませ方は色々あり得ます。
重要だと考える事件をレポートする記事の場合、PVとかは二の次で、深く刺さるかどうかが重要です。その逆で、とにかくより多くの人の目に触れることが目的の記事もあります。
私は戦略を立てるというよりも、それぞれの記事について最適な受け止められ方は何かなど、戦術を考え実行するのが得意です。

「適切な戦略は、高度な戦術を不要にする 」の事例

戦略家というのは、例えばLINE社の田端信太郎さんのように「メディア・メーカーの時代だ!」と大きな構想をぶちあげられる人を指します。


「日経を倒す!」と気炎を上げていた東洋経済オンラインの佐々木紀彦さんなんかもそうですね。


一方の私は戦術家で、「どこを攻めるべきか」決まれば、「あの手を使おう、この手も使える」と最大限うまくいくようにして結果を出すのが本分です。

ハフポのこれからの戦術とは

大熊 なるほど!確かに松浦さんは、例に挙げられたお二方とは異質だなあと思っていたんですが(笑)、ものすごく腑に落ちる説明でした。それでは、ハフポスト日本版というメディアが独自に使っている戦術とは何でしょうか?

松浦 「ブランディング」、「ソーシャルの活用」、そして「外から人を呼んでこられる仕組みづくり」の3つだけです。これを組み合わせてひたすらやっていくのみですね。しかも独自ではなく、どこのウェブメディアでも考えられていることです。味付けの差でしかないです。


中でも難しいのはブランディングです。やはりポジティブな空間を作っていきたいと考えていますが、ネットの世界でそれは簡単ではないです。仮に戦術を決める時点で、炎上もありだと決めてしまえばそれはそれでありで、ずっと燃え続けてるキャンプファイヤーならきっと読者も楽しいですよね。でもハフポスト日本版で炎上させる気は今もありません。ブランディング上、その策を取ることを良しとしていません。

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大熊 やっぱりネット右翼とか、炎上が渦巻いている中で、リベラルな雰囲気を作っているハフポスト日本版の存在意義はとても大きいと思います。それでは最後に、松浦さんご自身への質問です。松浦さんは最初は人工衛星のエンジニアを務められ、その後8度も職場を移ってます。「BLOGOS」や「WIRED.jp」などメディアの立ち上げ・運営にも多数関わってらっしゃいますが、これまでとハフポスト日本版で決定的に違うことってありますか?

松浦 ハフポスト日本版にはグローバルで共通化されたCMSなど強い仕組みがそもそもあります。ある意味、各国で戦って勝ってきた最新鋭の「ガンダム」をぽんと渡されて、これを操縦して日本のメディアという戦場で戦ってみろというような話です。ガンダムだから出来ることは多いけれど、逆に乗りこなすのは難しい部分もあり、とはいえガンダムなのに撃沈されてしまったら恥ずかしいですよね。そうした「乗りこなす楽しみ」は今までにないものです。

巧みな戦術家・松浦茂樹編集長のもとで、ハフポスト日本版はリベラルなネットメディアとして着実に成長しています。今後その社会的影響力も更に増してくるでしょう。これからも目が離せないメディアです。
(了) 

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