メディア・クエスター

メディア・コンテンツ業界に関する発信(海外やビジネスモデルへの言及が多い) 連絡はqumaruin(あっと)gmail.comまで。

2014年05月

僕は行ってませんが本日、日本版ハフィントン・ポストの一周年記念イベント「未来のつくりかた」がありました。
このハフポというメディアへの期待と現実、その巧妙なずれについて書きます。

日本上陸に際しての大きな期待

ハフポ日本版は鳴り物入りで日本に上陸しました。本国アメリカのハフポはピューリツァー賞を獲り、ニューヨークタイムズなどの看板記者がどんどん移籍しにくる怪物メディアです。hahupohongoku
日本版は、上陸前からあれやこれやと噂が飛び交い、公開1か月で「失敗だ」との声まで出ました。

ハフィントン・ポストとかほんと何だよ。朝日新聞は目を醒ませよ。

ハフィントン・ポスト上陸で明らかになったプロレス団体化、ロックフェス化するネット論壇サイト

裏を返せば、そこまで期待されていたということです。ハフポにかかる漠然とした期待の正体って、何なんでしょうか?


日本では2009年から、ライブドア(当時)が「BLOGOS」で本国ハフポ同様のモデルを始めました。個人の発信でネット言論をよくしようという理念をもつメディアで、管直人元首相とか田原総一朗さんの記事もよく載ります。しかしその政治的に中立な姿勢から、拾えていないニーズがありました。

「リベラル論壇」の理想と現実

日本版1周年にあたりハフィントンポストに期待すること ―「リベラル論壇」であり続けて欲しい

そのニーズとは何か。英国のジャーナリスト、小林恭子さんの記事が物語っています。現在の日本のネット空間では、ネトウヨ的な言論が圧倒的にウケます。そうした排外主義へのカウンターパートとして、既存のリベラル系の新聞や雑誌がうまく機能している気も、しません。ヤフー個人やBLOGOSも、建前上フラットなプラットフォームです。だから「健全なリベラル言論空間」が期待されたんでしょう。本国ハフポは明確にリベラル寄りという背景もあります。

けれどもハフポ編集長の松浦さんは、自らを「戦術家」と呼びます。メディア人独立の時代が来る!と叫ぶ佐々木紀彦さんやメディア・メーカーを提唱する田端信太郎さんのような大言壮語の「戦略家」と対比して、定まった目標に対してベストなアプローチを繰り広げていくことが得意だと言います。

ハフポのターゲット層を団塊ジュニア世代に設定したのも、パイが大きい割に訴求できているメディアが少ない、しかも労働や育児など様々な社会的課題を抱えていてチャンスあるという合理的な帰結です。

そこに「健全なリベラル、云々」という理念的なものを期待するのは、少しずれている気がします。


しかし幸運なことに、「健全なリベラルの話題」って、実はFacebookのシェアとの相性が物凄くいいんです。以前取り上げたバイラルメディアのUpworthydropoutに近いです。

象徴的なのが、今年1月に境治さんが執筆した「赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない」という記事です。育児問題を提言する素晴らしい記事ですが、これは16万以上の「いいね!」を獲得しました。とてつもない数です。ハフポに対するこれまでの累積いいね!数(8.9万)より多い。
 いいね

でも考えてみたらFacebookに「赤ちゃんにきびしい国で~」という記事があがってきたら、とりあえずいいね押しますよね。一方、集団的自衛権の行使についての激論って、たとえ賛同してようがシェアするのは結構勇気が要ります。(小保方さんを貶めるな!みたいな陰謀論が数千いいね!を獲得してたりも、しますが……。)
「健全なリベラルの話題」は、理念というより、戦術としての有効性からも推進されています。
境さんの16万いいね!は、ハフポの方向性を正当化した瞬間でしょう。本日行われた1周年イベントでも、境さんは登壇しました。

いわゆる「猫画像批判」についてもこの文脈から理解できます。ハフポって、よく動物の画像記事をアップしているんです。


猫

猫、可愛いですよね!いっぱい見られてシェアされがちです。それに対して、「それが作りたい言論空間なのか」みたいな批判は時々見られますが、お門違いなわけです。ユーザーが見て楽しめてシェアしたいと思えるものを提供するのがハフポだから、猫画像も立派な手段の一つです。本国ハフポでも、猫の画像は多数扱われています。

「未来」をつくるための課題

戦術としてのポジティブな言論、シェアしたくなる素材をうまく集めてきたことで、ハフポは月間で1000万人以上のUUを獲得しました。
hahupo

よく揶揄されたように、日本上陸して大失敗した「オーマイニュース」の二の舞にはならないという雰囲気が見えてきました。
問題は「その先」に行けるかどうか。月間PV5000万、UU1000万というのはこの手のメディアの一つの限界です。東洋経済オンラインがそうなように。

松浦編集長の目標は「より多くの人を楽しませる」ことですが、ここから更に拡大する際の仕掛けはどこにあるのでしょう?


もう一つ根本的な問いがあります。ネット空間に、この規模で良質なメディアを作ったのは素晴らしいことです。しかし「いい話」ばかりがどんどんシェアされ、荒れるのを防ぐためコメント欄にも検閲が入る「人工的な美しすぎる空間」は、どこかネットの本質と相反する気もします。美しい空間であり続けられるのか、それとも結局「ウェブはバカと暇人のもの」なのか。



日本版ハフィントン・ポストの今後を追うのが非常に楽しみです。

「笑い」が無性にほしいときに我々は何を観るでしょうか。やはりなんといってもテレビは強いです。Youtubeについつい没入しすぎてしまうこともあるでしょう。では、出先のちょっとした時間が出来たときは?手元にスマホしかないときは?
新時代のデバイスに対応して、あらゆる「笑い」を提供してユーザーを釘づけにしようとしているのがbitgather社のバイラルメディア「CuRAZY」です。公開初月から破竹の勢いでページビュー数を伸ばしてきたこのメディアを立ち上げた伊藤社長に、その戦略と将来像を伺いました。

CuRAZYとは何か

7b56994f97d478d15979baddd2fa05ea(CuRAZYより)

伊藤 簡単に説明すると、「笑い」部分に絞ったバイラルメディアです。
バイラルメディアというのは、Facebookなどのソーシャルでシェアされやすいコンテンツを配信するメディアのことです。いい話とか泣ける話とかがよくFacebookのフィードに上がってきて、「いいね!」押したりしますよね。
元々アメリカでは先にこの流れが来ていて、「笑い」や「娯楽」などのエンタメ分野では「BuzzFeed」、「政治」などの社会派は「Upworthy」というメディアがツートップです。これらはそれぞれ月間で数億のページビューを稼いでいます。

日本では「Upworthy」と同じ社会派路線で、起業家の家入一真さんが「dropout」というバイラルメディアを作り、伸ばしています。
bc00739925218036f4b2e68efd461763(dropout公式サイトより)
じゃあエンタメ系の「Buzzfeed」に近いものを創ろうということで始めたのが「CuRAZY」です。
BuzzFeed
がやっていることはコンテンツを集めてきてよりウケる形に整理、提供するという形で、アメリカの若者が一日中BuzzFeedのコンテンツをみて楽しめるという状況になっています。「from Google to Buzzfeed」ともいわれるほどです。

スマホでエンタメ系楽しむメディアはここ、となるように

大熊 日本でやってみて、今のところどれぐらいうけているんですか?

伊藤 4か月目で、月間PV1500万ほどです。そのうち82%を占めるのがスマホユーザーで、まさに時代の流れに乗ってうけていると感じています。今は1日に6本ほどコンテンツを出していますが、これをゆくゆく100本ほどにしたいです。
unnamed2(データ提供:CuRAZY)
大熊 ハイペースですね。しかし現在はコンテンツを内製せずに拾ってきていますよね。

伊藤 ニュース記事って基本的にどんどん消費されていくフロー型ですが、「笑い」とか「動物」のコンテンツって陳腐化しないんですね。突然シェアが再燃したりします。そういったものを上手くタイトルや見せ方を変えて使い回し、ストックしていってます。

大熊 「コンテンツを創らず、メディア内でぐるぐると循環させているだけだ」バイラルメディア全体に対して、そういう批判は考えられます。
今はとにかくトラフィックを稼ぐ、ユーザーを集めるという段階だと思いますが、「その先」では何がしたいのか。ぜひお伺いしたいです。

伊藤 そうですね、今はユーザーのアセットも、コンテンツのアセットもないです。まずユーザーに関しては、アプリ化することで定着を図ります。

そしてコンテンツに関しては、どんどん独自のものを創っていきます。我々の最終的な目的は笑いを「再現」することです。
画像や動画に限らず、「CuRAZY」発のゲームを創ったり、色々楽しめるようにしたいんです。

ユーザー参加型のCGMもCuRAZYとの親和性を見ながらいくつか展開していきます。ケータイ小説ではDeNAのエブリスタがやっているような仕組みですね。

また、吉本と提携して、独自コンテンツを作っていきます。吉本サイドからすると、「ネットでウケる人」っていうのがYoutubeやニコ生から素人で出てきてて、悔しい部分があると思うんです。そこで、うちと組んでネット発の芸人を作ろうとしています。

これらの根底にあるのはやはり、「スマホ時代の娯楽メディア」として確立したい思いです。

大熊 まずユーザーを集め、そこから様々なコンテンツを生み出していく、幅を広げていくというやり方はまさにBuzzFeedですね。そのBuzzFeedですが、エンタメをやりつつも、ピューリツァー賞を獲った人のチームで調査報道を始めましたよね。そういったことをされる予定はありますか?


伊藤 調査報道1割、ドラマ・エンタメ9というのがBuzzFeedのコンテンツの内訳ですし、テレビもこれに近いんです。これがユーザーが満足する比率なのかなと思っています。うちもそのあたりを目指していきます。

「メディアとしてのバランスを保ちたい」という思いがあるからです。


大熊 お話を伺っていて、「笑い」への並々ならぬこだわりを感じますが、そこまでこだわるわけってなんでしょう?
 

使える「笑い」を科学する

伊藤  「笑い」はあらゆることのとっかかりになるんです。「笑い」をうまく活かしたCMの効果は非常に高いといったことも言われています。
しかし現状、何がウケてバズるかといったことが中々事前にわからないですよね。テレビは頑張って視聴者にハッシュタグつけてもらってTwitterから声を拾おうなどとしていますが、ブラックボックスなわけです。そこで我々はきちんとデータをとって、打率を上げていこうと試みています。それが出来れば、収益性の良い記事広告も書いていけることになります。
バイラルメディア自体は10分で作れる という話もあり、参入障壁は低いですが、データに基づき科学的に笑いを生み出していくという点に競合優位性があると思っています。

大熊 これは映画の話ですが、大ヒットの「アナと雪の女王」も、脚本や演出において今までウケたものや時流をデータ化して、きちんと統計的にヒットを狙いに行った、と言われています。データに基づいてウケるコンテンツを創るという流れでは同じですね。
今、メンバーはどのぐらいいて、どういうバックグラウンドの人が多いんでしょうか。

伊藤 ライターは私を含めて2人 アプリ開発などするエンジニア2人と、インターン生5人の計9人でやっています。 これからはエンタメ雑誌やテレビ局でバラエティをやってた人・ソーシャルサービスの中毒者がほしいですね。特に、お金をかけて面白いことをやるノウハウを持っているのはテレビ局の人が圧倒的です。データで打率を上げることはできると言いましたが、「笑い」のツボを押さえるのは大変で、記事を外注するのは難しいんです。テレビ局の人材とネットでウケているようなYoutuberをマッチさせて、鍛えていければネットでしかできない面白いことをどんどんやっていけると考えています。 

来年はBuzzFeedとのたたかい

大熊 そこまで行くと、「スマホ時代の娯楽メディア」も夢ではなくなるし、非常にわくわくする話になってきますね。最大の山場になってくると思うのが、もともとCuRAZYがベンチマークにしていたBuzzFeedが来年日本に上陸することでしょう。
 

伊藤 東洋と西洋では「笑い」のツボも違いますし、国内の既存大手と提携するでしょうが、時間はかかるんじゃないでしょうか。それまでに、月間1PVほどの規模感にまで「CuRAZY」を成長させて、迎え撃ちたいです。

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今回インタビューさせていただいた伊藤新之介さんは弱冠25歳。元々は漫画投稿サービスで起業し、それがきっかけとなって海外で流行っているメディアについて詳しく調べだしたそうです。

見切り発車に近い形でスタートした「CuRAZY」ですが、初月から数百万のPVを稼ぐヒットとなり、今やバイラルメディアの枠組みに止まらない成長戦略がはっきりと描かれているように見受けられました。
今後どこまでエンタメメディアの勢力図を変えていくのか、非常に楽しみです。 

 

5月21日、東洋経済オンラインの編集長を務める佐々木紀彦さんが、株式会社UZABASEが提供するニュースサービス「NewsPicks」事業で新しく発足する編集部に移籍することが分かりました。

東洋経済オンライン佐々木編集長、ニューズピックスへ

佐々木さんは東洋経済の紙の記者・編集者としてのキャリアや米国留学の経験を積んでから東洋経済オンラインの編集長に就き、そのPV数を10倍増させ経済誌のオンライン版トップに押し上げました。

その経験に基づいてメディア業界の未来を論じた「5年後、メディアは稼げるか」は今や紙・オンライン問わずメディア業界関係者の必読書となっています。

そんなスターが移籍する先である「NewsPicks」は、乱立するニュースアプリの中で一味違った存在感を放っています。

UZABASE社長・梅田優祐氏"ニュースアプリも企画力勝負の時代へ"

欲しい分野のニュースが自動で届けられる仕組みは他のニュースメディアと同じですが、他と異なるのはそこに大学教授や一線級のビジネスマンによる高質なコメントがつき、理解が助けられるところです。サービス開始から僅か8か月でありながら、ビジネスマンを中心に熱狂的な広がりを見せています。このサービスを率いるUZABASE社の梅田優祐社長は、コンサルティングファーム・投資銀行出身の経歴を持ち、「世界一の経済メディアを目指す」という野望を掲げています。
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(NewsPicks公式サイトより)
僕は梅田さんに4月末にインタビューし、5月初頭に佐々木さんに大学の講義でお会いした際「2人は連携するのでは」と感じていました。その背景を「プラティッシャー」というキーワードを基に解説し、今後を占ってみます。

2人の共通認識「プラティッシャーが業界を制す」とは

メディア業界を、「プラットフォーマー」と「パブリッシャー」に分けます。「パブリッシャー」はコンテンツを生産して出すところで、経済系なら日経新聞や東洋経済……から、個人のブログまでが当たります。「プラットフォーマー」はそれらのコンテンツを集めてキュレーションし、ユーザーに提供する媒体です。最近はやりのGunosyやSmartnews、そしてNewsPicksもこれに当たります。
佐々木さんがよく講演などで述べるのは、この両者の融合です。プラットフォーマーとして様々なコンテンツで読者を集めつつ、独自のコンテンツで勝負する媒体が最終的に生き残るというのです。

梅田さんも、「Tの字モデル」という言葉で同様の概念を提唱しています。プラットフォームを巡る争いはコモディティ化を免れず、いずれ数プレーヤーが残って独自コンテンツで勝負するフェーズがくると言うのです。
乱立するニュースアプリが繰り広げる流通を巡る競争は、「ニュースを集めてうまく見せているだけで、コンテンツを創ってないじゃん!」と、批判される向きもあります。しかしプレーヤーの多くはコンテンツを考えていないわけではなく、「まず流通を押さえ、それから独自コンテンツの生産へ」という理念に基づいて戦っているわけです。

プラティッシャーになると何がいいのか。流通を押さえたうえで、価値のある独自コンテンツをどんどん出していけます。そのビジネスモデルには色々考えられますが、記事広告の他に、有料課金もできるでしょう。現状プラットフォーマーは主にトラフィックの量に応じたバナー広告で稼いでいますが、これはひたすらフローを追い求めて時には炎上も誘発もしてしまうような仕組みと言えます。有料課金モデルが成立すれば、「いいコンテンツに相応しい対価が支払われる」という健全な姿になります。

パブリッシャーからプラティッシャーは難しい?

さて、佐々木さん率いる東洋経済オンラインは、パブリッシャーの立ち位置です。

プラティッシャーこそwebメディアが勝つ方法だ」佐々木編集長が語る東洋経済オンラインの戦略

上記のインタビューで用いられた論理では、プラットフォーマーとして圧倒的に強いのは「Yahoo!」で、ニュースアプリは勝てない。一方パブリッシャー側の東洋経済は、外部メディアの記事や外部のコラムニストによる執筆を増やし、プラットフォーム側に近づいていけるとされます。

しかし、現在までで東洋経済オンラインはその試みに行き詰っているようにも見えます。プラットフォーマー化の目安となる月間1億PVには遠く及ばない5000万PV前後で最近は推移しています。
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(「東洋経済オンライン」トップページより)
勿論、動画も開始するなど、収益化の面で様々な新しい取り組みはされていますが、やはりもともとあった本誌「東洋経済」とのブランドの兼ね合いで、完全に自由には出来ないこと、そしてアプリやソーシャルなどやはり流通部分を担える人材が薄く、弱いことが原因だと思われます。

対するNewsPicksは、プラットフォーマーの立ち位置から伸び続け数十万のユーザーを獲得し、有料版も開始するなど進化を続けています。そして、7月にはいよいよ編集部を発足させると公言していました。

まとめると、これまで

東洋経済には ○コンテンツ企画力・既存のブランド  があり、×アプリ・ソーシャルの流通力  がない
NewsPicksには ○アプリ・ソーシャルの流通力 があり、 ×企画力・既存ブランド  がない


という状態でした。佐々木さん・梅田さんは共に現在のメディア業界を「100年に1度の変革期」と呼び理念も近かったので、先日行われた角川とドワンゴのような提携が来るのかな?と予想していました。
しかし提携ではなく佐々木さんの移籍という形となったのは、「プラティッシャーになるのはプラットフォーマーから」を示す一例と言えるのではないでしょうか。

NewsPicks覇権への鍵を握る、日経新聞の動向

さて、今後を左右するのは、日経新聞電子版がどう動いてくるかです。ここは圧倒的な既存ブランドを持っています。東洋経済オンラインの月間5000万PVに対して約3億PVというと規模が分かるかと思います。4000円の有料課金モデルで30万人の読者も掴んでいますし、まさに経済メディアのラスボスですね。集めているニュース・著者の網羅性からも、パブリッシャーとして最強です。佐々木さんは東洋経済オンラインではひたすら日経がやらないことをやってきてニッチに成功しましたが、日経が本格的にニュースアプリもやってきたらどうなるでしょう?
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(日経新聞広報部より)

すでに3月に、日経は経済ニュースのキュレーションサービスを開始しています。注目すべくは、最初から有料版で打って出ているところですね。NewsPicksと棲み分けていく可能性もありますが、梅田さんが「世界一の経済メディアを目指す」以上、いずれぶつかることは不可避化かと思います。

ジャーナリスト独立時代の幕開け?

記者・編集者独立の時代が来る、と主張されていた佐々木さんは、今回身をもってそれを体現しました。

「記者独立の時代、5年で来る」佐々木紀彦編集長に聞く 

10年近くも前から、元「AERA」編集長の蜷川真夫氏が「J-CASTニュース」を立ち上げるなどの動きはありましたが、ここから一気に人材移動が加速化することはあり得るのでしょうか?
ここから一気に人材移動が加速化することはあり得るのでしょうか?
ごく短期的なポイントでは、NewsPicks編集部が他にも魅力的な記者・編集者を呼び込めるか、そして他のプラットフォーマーがプラティッシャー化に乗り出したときに、どれだけ強く人材を引き込めるかに注目すべきです。
これらすべてが今年中に起きるとみています。

プロブロガー、イケダハヤト氏へのインタビューの続きです。

前編はこちら→「五年後にはメディア投資家やってます」イケダハヤト氏インタビュー(前編)

大手メディアには投資を頑張ってほしい

大熊 大手メディアも変わろうとしていて挑戦していますが、どう思いますか。人材移動が起きるかどうか、僕は注目しているんですが。
 
イケダ 僕は大手の新聞記者に独立を願ったりはしません。ただいずれ否が応にも押し出される人は出てくるはずで、それなら先行者優位があるうちにさっさと独立した方がいいとは思いますよ。
そうでないなら、年収1000万あるんだったら、じゃあ100万円分は投資してくれ。投資側に回って新しいメディアを生まれやすくしてくれ、と願っています。

大熊 「朝日新聞メディアラボ」なんかはその取組みにやや近いかもしれませんね。投資も行っていますし。僕はまだ業界人でもないのでわからないんですが、新旧メディア人材の交流はないんですか?

イケダ 経営陣レベルでは絶望的にないですね。記者レベルでも少なくて、来ていても社ではなく個人として来ます。だからブレイクスルーがあるかというとわからないですね。
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(flickr参照)

常にメディアの行く末を見通して、適切にリスク分散する

大熊 少し質問が変わります。イケハヤさんは独立して自由にやっていこうぜというスタンスだとは思いますが、検索エンジンやソーシャルといったプラットフォームには依存せざるを得ないですよね。Facebookはたびたび仕様を変えますし、今度Googleが検索の仕組みを変えるとも言っています。

イケダ  プラットフォームには依存せざるを得ないし、リスク分散は必要です。僕はブログでうまくいかなくなったら例えばイベントビジネスをやって稼ごう、といったような備えはやっていますし、そうなったらしょうがねえっていう諦めの気持ちも持っています。どんなメディアでも、ビジネスでもそうですよ。「現代ビジネス」とかもたとえば今はバナー広告一本でやってますが、記事広告をやることも考えられるし、講談社のホールを使って稼げるイベントだってきっと出来るじゃないですか。リスク分散しつつ、新しいことやりつづける必要があります。

大熊 プラットフォームとれなくてもいい、とれない中で頑張り方があるんだ、というのなら沢山の人に希望がありますね。

イケダ  そうそう、プラットフォームには中々なれないし、なれなくてもいいですよ。個人で十分色々できます。津田大介さんなんかは、有料メルマガという盤石な収益源の元でたくさん挑戦していますよね。

編集力を身につけるには

大熊 そうしたスター級の人たちは、自身が高いクオリティのコンテンツと化していて、そこまでいったらいくらでもやっていけるんだと思います。でも、スターじゃない個人が大半ですよね。そういう人はどうやって生き残っていくんでしょう。

イケダ そういう意味では「編集」の力が大事ですね。編集者が出来ることって掛け算なんですよ。
自分自身はすごくなくても、ユニークな組み合わせによってすごいものが見せられます。

大熊 「編集」ということには僕もすごく興味があるし、やっていきたいとも思っているんですけど、その本質がなんなのか、正直つかみかねているところがあります。

イケダ 編集っていうのは、世の中の解像度をあげることです。例えば僕たちは今スタバで話していますが、この照明のスタバのデザインってちょっと特殊だよね、と目をつけて、それついて独特の切り口でまとめるとか。そういったトレーニングをよくしているかと、後は1つの分野について物凄く深く調べているかで、編集力は変わってくるんじゃないでしょうか。
で、自分で書く・取材するだけじゃなく、誰かに面白いテーマで書かせたり、対談させたり、はたまたそれを組み合わせたりイベントしたりして、それで「これが私のジャーナリズムです」という形にして世に問うのは大いにアリだと思いますよ。
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(flickr参照)

新しいものについていけなくなったら終わり

大熊 最後に、イケハヤさんが今注目している新しいやり方ってなんですか?

イケダ 今はバーチャルリアリティがやばいですよ。Facebookが買収したOculusの勉強しています。


これをつけて振り向くと映像がついてくるしめちゃくちゃ没入するんです。ホラー映画とかほんとに怖くて途中でみるのをやめましたし。こういうのに出会うと、ブログとかやってる場合じゃねえってなりますよ。
例えば国語の教科書をバーチャルリアリティにしたら面白くないですか?「羅生門」で老婆が毛を抜いているのが生々しく見えるとか、すごいって思いません?
これからのジャーナリズムはOculusだー!と言われる日はいつか来るでしょう。その時第一人者になれるように今から勉強してるんですよ。1日2時間ぐらいやってればディレクションぐらいは出来るようになるので、教科書でやって話題よぶのもいいし、観光地の映像を追体験!とかも面白いですね。色々思いつきます。5年後には、来てると思いますね。こういう流れにはずっと行きたいですし、ついていけなくなったら終わりかなと思います。

(了)


実際に会ったイケダハヤトさんは、将来像についてさまざまな仮説を打ち立てて実践している人でした。
そしてとにかく話すのが好きで、面白く物語ってくれているのが伝わってきました。その人柄が、多くの人にたたかれながらも愛される所以なのかと感じました。
インタビューにも快く応じ、取材留学という僕の挑戦も応援してくださったイケダハヤトさんに感謝です。

「『無断転載』の何が悪いの?」 「『文章の巧い下手』とかどうでもよすぎてウンコ漏らしそう」-
 
歯に衣着せぬ物言いで毀誉褒貶あるのがプロブロガーのイケダハヤト氏です。
彼の挑戦的な問いかけは、たびたびネット空間での炎上を引き起こします。数えきれないメディア関係者を敵に回す彼にインタビューすることを、正直最初は逡巡しました。
しかし調べれば調べるほど、周囲から様々な反応を引き起こす高い議題設定能力はものすごいのだと思うようになりました。さらに、月間100万前後のページビューを稼ぐブログ「イケハヤ書店」以外にも書籍の執筆、テレビ・ラジオ・イベントの主演、塾の主催などあらゆることに手をだしトライ&エラーを繰り返しているのは歴然とした事実ですし、突き抜けています。

最前線で体を張って挑戦し続けるイケダハヤト氏だけに見えている「メディアの未来」があるのではないか。
そんな思いから、お話を伺ってきました。
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五年後はメディア投資家になっていたい

大熊 いきなり本題に入りますが、イケハヤさんは、書くことだけに限っても通常の記事に加えてブランドコンテンツやったり有料メルマガやったり……今出来ることは何でもやっていますよね。
それでは、五年後には環境はどう変わっていると考えていて、そこでイケハヤさんは何をやってたいですか?

イケダ メディアで稼いでいるのは間違いないですね。まずはブログを続けていきます。1日3時間ぐらい書いていると、月間で20万円程度の収入にはなります。記事はどんどんストックされていきますので急激に収益が落ちることは考えにくい。とはいえもう今後PVが2倍3倍と伸びていくような余地はないんでしょうが、それでいいんです。
余った金で自分が面白いメディアと思うメディアに投資するつもりです。

大熊 投資ですか!自分でやるのが好きなのかな、と思っていました。

イケダ 初めは稼いだお金の余った分を自己投資しようとまずは有料メルマガを作ってみたんですけど、編集者入れようにも僕の色が強くですぎてうまくいかなくて反省したという経緯があります。それに僕ももう五年目でこの業界で別に若くもないので、どんどん下に育ってもらいたいという思いもあります。イケハヤ
(BLOGOSメルマガページ参照)

大熊 「五年後どうなるか」というテーマでしたが、イケハヤさん的にはこれまでのキャリアと同じ分というわけですね。

イケダ そうなりますね(笑)そこで、小粒だけど面白いところの初期段階から関わって、経営陣として一緒に育てていきたいと考えるようになりました。海外ではハフィントンポストがAOLにバイアウトしたのを皮切りに、バイアウトの流れがきています。「三年後に1億とか2億でどっかの企業が買うだろうなあ」というメディアに張って、実際に1つ2つ出てくるといいなと。

大熊 それが可能なら、夢がありますね。小さなメディアに数十万円とかの規模で投資すると何ができるようになるんですか?

イケダ  例えば「ラジおこし」 っていうのがあって、いろんなとこにあったラジオを書き起こす需要をくみ上げているサイトです。昨日の番組を今日書き起こす。出演者にとっても嬉しいサービスだと思うんですよね。今ライター1人でこの仕組みを回していますが、お金があったらもう1人雇えて、ローカルなラジオも書き起こせるかもしれない。この媒体にはラジオ好きがわんさか集まってきますし、ラジオ側がこれをもっと有効活用できるんじゃないかって思います。公式パートナーとして組める可能性だって大いにありますよね。
これに限らず、「医療」とか「観光」など、売却先のイメージがつくところに数百万とか出すと面白いかなと。例えば訪日外国人向け観光メディア「MATCHA」とかですね。まっちゃ
(公式ページ参照)

本気出したら2000万稼げるけど、やらない

大熊 なるほど。「ラジおこし」は直観的に「怒る出演者の人もいたり、著作権的にまずかろう」とも思ったんですが、公式に組んだり、バイアウトするという道筋も確かに描けなくはないですね。
でもブログで数百万、その他出演料とかでもう数百万という収入だと、投資できる規模も数も限られるかなあとは思うんですが、そのあたりはいいんでしょうか。

イケダ 本気出したら年収2000万ぐらいは稼げるんですが、そこまでして稼ぎたくもないんです。僕の事業規模感はこれぐらいで、限界を突破までしてまでやりたくもないということです。

大熊 とても失礼な話をすることになりますが、大学生の僕の友達の中には、「イケハヤさんほどがんばっても年収500万かよ」と捉えてネットメディアで頑張ることに絶望する人もいます。
これが1億円だ、プロ野球選手並みだ、とかだったら、夢もあるから皆目指そうってなるのかもしれないんですが。

イケダ そう見えることもあるんですねえ。労働時間だけで考えると、僕は身体も弱いし育児もあるしで、たぶん普通の会社員より少ないですよ。、そんなかで自分のやりたいようにやってこれだということです。
結果として編集できる人・書ける人・マネタイズできる人もいないというこの業界の人材枯渇感がやばいので全部やっていますが、編集とか収益化は実はそんな得意じゃないんです。超える人はでてきて全然いいですしむしろ出てきてほしいです。 

メディア・メーカーが必要だけどいない

大熊 人材が出てこないのにはやっぱり儲からないという部分も大きいかなと思っていて、特に、プラットフォームを創る人はやっていけるけどコンテンツつくるライターはもう儲からないですよね。北条かやさんの記事にもありましたが、時給150円で買いたたかれたりします。

イケダ それは、よそから仕事もらってるようじゃきついですよ。自分で独立して、自分でやれよっていうのが僕の持論です。ジャーナリストになりたいとかいう学生に会って話したりするんですけど、まず言うのは「自分でやれよ自分のブログで稼げるようになってからいえよ。」なんです。フリーライターって雇われ人材だけど、それで食っていけるのは小田嶋隆さんとかが最後の世代じゃないでしょうか。おだじま
(Google検索より)

大熊 実際やってみれば肌感もわかるし何がウケるか反応ももらえますがなんでみんなやんないんでしょう。

イケダ 編集とライターとの仕事の切り分けを意識レベルで切り分けているんでしょう。あと、矢面に立つことを恐れています。

大熊 それを恐れているようではもはやジャーナリストに向いているのか?という疑問もわきますが……

イケダ 市場は先頭にたってやっていく人を求めてるけど、上にも下にも同世代にもほぼいないんです。、イノベーション起こすようなディア・メーカーがほしいです。お笑いバイラルメディア「CuRAZY」立ち上げた伊藤さんなんかは、いいですよ。彼は一瞬で化けたんです。化けて、そして伸びつづけている。これがメディア・メーカーの面白さです。2か月前の彼とは別人ですね。今や「日本のBuzzfeed」をつくる筆頭候補でしょう。
最初はレイアウトも「これワードプレス感満載だな」みたいな適当さだったんですが(笑)


(様々なマネタイズモデルのあり方、イケハヤさんが今取り組んでいるものに触れた後編に続く。) 

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