メディア・クエスター

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2014年04月

こんにちは。「デジタルジャーナリズムの大変革を体感するため、アメリカの現地企業に取材留学をする」という計画を進めているくまりんです。今日は進捗報告を行います。

具体的に何をするのか

報告に入る前に簡単にもう少し説明しておきましょう。
僕の計画は、アメリカ現地の
①大手から独立してできた新興メディア企業
を中心に、
②大手新聞社/出版社の中で電子版の取り組みがめざましい企業
③メディア領域に進出している、IT大企業
④デジタルジャーナリズムを教えている教育機関

にアポをとり、名物記者や編集者に数時間もらって「デジタルジャーナリズムに対してどういうビジョンを持っているのか?」をインタビューしたり、可能であれば短期の無給インターンや研修への参加をさせてもらう、というものです。
予定企業
訪問予定企業(や教育機関)は現在ざっと挙げただけで30以上ですが、来年1月に乗りこむまでにはもっと増えているはずです。

「デジタルファースト」全米2位の新聞社の戦略はなぜ頓挫したか(新聞紙学的)

などのニュースからもわかるように、アメリカのデジタルジャーナリズム業界は日々プレーヤーが移り変わっているからです。これが、現地で直接そのスピード感をみたい理由でもあります。

さて、やりたいことは明確に決まっているものの、「どうやってアポをとればいいのだろう」というのが悩みの種でした。
僕がいくら意識を高めようと、所詮どこの馬の骨とも知れない、日本人の学生です。そんな奴に、目まぐるしい変化の中にいるウェブ編集者達がかまってくれるのか。そして、大事なことをしゃべってくれるのか。

ところが実際にやってみると、少なくとも前者については杞憂なことが分かりました。

メールを出すと予想以上の反応が

まず僕は「できたばかりのメディアはより多くの広報を求めているだろう。『デジタルジャーナリストを志す日本人です、日本でも御メディアを広めたいので、ぜひ取材させてください!』と訴えかければ響くものがあるのでは?」と思って、Upworthyというメディアに目をつけました。
Upworthyはいわゆる「バイラルメディア」:貧困問題などでFacebookでよくシェアされるコンテンツを配信しているメディアで、できてからまだ2年ほどしか経っていません。

アップワーシー、立ち上げ2年経たずに月間訪問数8900万人を突破(メディアの輪郭)

upworthy
「Contact Us」のページも、どこか気楽に連絡できそうな雰囲気をまとっています。
ということで拙い英文を書き、Weblio辞書でなおしては書き、を繰り返して「来年1~3月の間で数時間インタビューできる時間はありますか?」との旨を送りました。
すると、たった3時間で返信が!

かまいませんよ。ただ、流石にまだ2015年のカレンダーは買ってないから、また年末までに連絡をくださいね(要約)

と、きわめてフランクなノリで応じていただけました。
これで調子づき、今度は、「バイラルメディア」とは逆の動き、すなわちデジタルで長文の骨太の記事を配信する試みを続ける「Narratively」というメディアにFacebookからメッセージを送ったところ、これも快諾。1日インターンができないかどうかの交渉を続けています。
 

さらには、ニューヨーク市立大学で"Entrepreneurial Journalism"を教えるJeremy Caplan氏のアポイントも取れました。Caplanは昨年末早稲田大学で講演も行っています。
キャプラン
デジタルジャーナリズム時代の、5つの教訓(東洋経済オンライン)

彼自身が講義を受け持つ、TOW-KNIGHT CENTER FOR ENTREPRENEURIAL JOURNALISM
というプログラムにもぜひ応募してはどうか?との誘いも受けました。
これは世界中から「ジャーナリズムで起業したい」という志を持つ人が集まって5か月間学ぶプログラムで、月水に一日中講義・金曜には実際にスタートアップに見学に行くという濃密な内容に以前から目はつけていました。


週3回講義のため取材と両立しうるし、ビザを取るうえでも有利(今のところ、現地の語学学校に通って就学ビザをとるつもり)なのでチャレンジするつもりです。倍率は非常に高いそうですが。

ということで、アポをとることに関してはこちらがとにかく積極的に情熱を見せれば何とかなるところが多いのでは、という感触を得ました。もちろんそれだけではうまくいかないところもあるでしょうから、もっと頭を使って相手に受け入れられる頼み方を練ります。

あとはひたすら下準備

もう1つの不安点、「行っても、大事なことをしゃべってくれるのか」について。
もし通り一遍のことしか聞けないのであれば、現地に行く意味は大分薄れます。
先ほどから多数引用している「メディアの輪郭」や「新聞紙学的」など、現地企業の動向を伝える媒体はあるし、

"デジタルメディア"を知るために必読の海外メディア11選(メディアの輪郭)

参考にできる海外サイトもあります。ここに書かれていること以上の情報を自ら得るためには、僕自身のデジタルジャーナリズムに対する理解、対象企業への理解の度合いをぐっと引き上げる必要があります。

「ジャーナリズムの未来はどうなると思いますか?」

と聞くより、

「あなたのメディアはバイラルメディアで収益の90%をあげていますが、その利益を回して調査報道にも取り組んでおられます。両者のシナジーは例えば貧困報道といった点においてどういったものがありますか?また、これした戦略をとる背景にはジャーナリズムの未来をどう考え、どうしたいといった思いがあるのですか?」

と聞いた方が具体的な話が返ってくることでしょう。(もちろんまだ後者のレベルでもざっくりしすぎていますが。)
僕が投資分析をするときも、IR(上場企業の株主への広報担当)への取材でいかに言質をとるかの勝負になることが大半でしたが、当然ながら確たる仮説と知識を持って聞くのとそうでないのとでは得られる情報量が段違いでした。

そのためにも日本でできる準備、すなわちジャーナリズムの体系的な勉強と、日本人ジャーナリスト/ジャーナリズム機関への取材を時間を見つけては続けていこうと思います。
来週は、メディア・アクティビストの津田大介さんを取材させていただきます。

トビタテ留学ジャパンとは
rj_logo
日本再興戦略と産業界からの意向を踏まえ、実践的な学びを焦点に、自然科学系分野、複合・融合分野における留学や、新興国への留学、諸外国のトップレベルの大学等に留学する学生を支援します。また、学生の海外留学を促進するという観点から、各領域でリーダーシップを発揮する多様な人材を支援し、海外留学の機運を高めることを目的としています
公式HPより)

一言でいうと、官民共同で行われるまったく新しい留学支援プロジェクトです。
その特徴は、
①年額最大300万円というこれまでにない規模の支援が行われる。
②事前・事後研修を通して充実したネットワーキング得られ、留学の価値が高まる・認められる。
③現地インターンやワークショップなど、多様な形が認められる。

といった点にあります。
そんなトビタテ!留学JAPANについて、自身も幼少期にシンガポールで暮らした経験のある中村隆之さん( 文部科学省 高等教育局学生・留学課 留学生交流室(当時))に語っていただきました。


グローバル化に向けて国も民間も本気で動き出した
くま トビタテ留学JAPANは名だたる大企業100社以上がサポーターを務めており、「何かとてつもなく大きなことが始まるんだろうな」と思わされます。なぜ今、国は大規模な留学プロジェクトに取り組むのでしょうか?

中村(敬称略)ひとつには、全盛期と比べて日本人留学生の数が3割程度に落ち込んできたことに対する危機感があります。これに対して企業はグローバル人材をより多く求めていますが、ミスマッチは年々拡大しています。それは国としてもまずかろう、と。

くま 企業はこれまで独自に対策をとってきたんですか?

中村 そうです。しかし企業での研修など、内製するには限度がありました。そこで今回、国を挙げてのプロジェクトにすると多くの企業が賛同してくれたのです。

これまで「留学」は魅力的なコンテンツではなかった
くま この留学プロジェクトでは、新興国に行く人や、現地インターンをする人など本当に幅広い意味での留学を認めていて、「多様性」がひとつのキーワードになっています。

中村 これまで、国として支援する以上は厳密な資格設定が必要だろうということで、GPAとか、TOEFLの点数といった客観的な指標を決めていました。しかし、そうした画一的な留学は学生にとって魅力的なコンテンツでなくなってきています。

くま たしかに東大にも交換留学制度はありますが、定員割れをする留学先もあるそうです。

まさに留学のイノベーション
中村 そこで民間を入れることで、多様な留学を認めることが可能になりました。海外で事業を興したいとか、現地のNPOで働いてみたいというニーズをくみ取れるようになったのです。

くま 僕もこのプログラムを使って「NYで取材留学をする」という計画を立てていますが、従来の留学支援制度では不可能でしたね。実際に面白い応募は多いんですか?

中村 それなりの数はありますね。300名中の30名は「多様性コース」といって、スポーツやアートに関する留学でも認めるという制度を設けていますが、たくさん魅力的なプランが集まっていますね。

くま 本当に幅広いやり方が認められていますよね。

中村 こうした多様性を認めることは、長い目で見れば結局企業にとってもビジネスチャンスにつながるんです。吸収力の高い学生を海外に行かせて、10年・20年後のトレンドになるかもしれないことを見させるわけですから。まさに新しい「留学文化」を作ろうというわけです。今年は300人の募集ですが、10月から始まる来年度の応募では1000人。オリンピックがある2020年までにこの計画で1万人を海外に送りこむ予定です。

くま それぞれ独自のプロジェクトで留学するメンバーたちが、事前・事後研修の場で人脈が作れるというのも非常に魅力的ですね。

中村  せっかく留学してもらうのだから、その効果をなるべく高めてもらおうという意図があります。まだ予定の段階ですが、ヤング・グローバルリーダーの方など民間から講師を招いて数日間の合宿も予定しています。

東大生の問題意識と合致するはず
くま 内向きになりがちといわれる東大生に向かってなにかメッセージはありますか?

中村 私の周囲には面白い東大生も多いので(笑)、あまり内向きとかは心配していないのですが。東大生には強い問題意識を持っている、何かやりたいという方が多いですよね。そうした目的を果たすのに非常に有効なプログラムだといえます。
これは東大生に限らずいえることですが、学生というのはいくらでもチャレンジできていくらでも失敗できるとても貴重な期間です。特権ともいえますね。トビタテ留学JAPANはチャンレジのきっかけを大いに与えられるので、視野を広げる、視座を高めることにつながればと思います。


第1回(2014年8月~2015年3月)の参加者締切間近!
トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム
の申し込みはこちら



 

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