メディア・クエスター

メディア・コンテンツ業界に関する発信(海外やビジネスモデルへの言及が多い) 連絡はqumaruin(あっと)gmail.comまで。


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(Twitterよりキャプチャ)

ITジャーナリストとして名高い佐々木俊尚(@sasakitoshinao)さんに、前半部ではメディア業界のこれからについて、後半部では発信力を高める秘訣についてお伺いしました。


「ビジネスとジャーナリズムの折り合い」の答えは見つかっていない

くまりん(以下、くま) 本日はよろしくお願いします。僕は今、ウェブの世界で、新聞社の記事をまとめただけのメディアや、Facebookでのシェアを狙うだけのメディア(=バイラルメディア)がウケている状況を危惧しています。朝日新聞の記者にお話をうかがった時も、「手間暇かけて取材して書いても、それをちょろっとまとめたウェブサイトの方がウケる」と嘆いていました。

佐々木俊尚氏(以下、佐々木 敬称略) コンテンツの質が高いことと儲かることは一致しなくなっていて、それをどうするか、の答えは正直なところ誰もまだわからない。ただ、アメリカでいうとBuzzfeedというメディアはバイラルメディアとしてPVを稼ぎつつ、濃厚な調査報道のための資金に充てている。そうした流れが来るんじゃないか。

くま 今度日本に上陸するBuzzfeedなども同様のことをしようとしていますね。その点でアメリカは進んでいるように思えますが、どうしてでしょう?実情を探るべく、アメリカ現地メディアへの取材留学を計画しています。

佐々木 まずもって、英語圏10数億人のマーケットは単純に日本語圏の10倍だから、なかなか儲からないといわれているネット広告でもビジネスが成り立ちやすい。加えて寄付文化の存在があって、調査報道のために寄付がなされるNPO的な仕組みがある。
お国柄の違いは重要で、たとえば韓国メディアはずっと軍事政権と癒着していたので市民からの信頼度が低かった。そこで民主化してから金大中政権のときに「オーマイニュース」というネットメディアが出てきて非常に盛り上がったが、日本に進出しても大失敗して閉鎖してしまった。日本では一応、大手メディアへの信頼感が高かったためだ。

くま そういった意味では、アメリカでニューヨークタイムズやワシントンポストと肩を並べるようになり、日本に上陸したハフィントンポストが成功するかは気になります。

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(「ハフィントンポスト」日本版 flickr/Takeshi KOUNO)

佐々木 ネットの言論というのは集約されないのが問題だった。その点既存のメディアは「一面」などが決まっていて、そこに議論が集約されていた。ハフィントンポストは日本のネット言論を集約させようとしていて、質の高いブロガーや記者に書かせたり、コメント欄を盛り上げようとしているようだ。だがまだ成功モデルは模索中といったように見受けられる。

くま なるほど。他に、日本のメディア界の革新が進まないとすると、人材の流動性が低いことが理由になるのではないか、と聞いたことがあります。現実にアメリカのように新聞をやめて独立という人は少ない気がします。

佐々木 アメリカでは新聞業界が赤字や倒産で絶望的な状況なので飛び出す人が出ている。日本の新聞社は宅配制度がある以上しばらくの間そこまではいかないのは確か。しかし、雑誌業界はアメリカの新聞同様に悲惨。現にそこから離脱して新しいものを作る人は出てきている。

くま 例えばcakesの加藤さんは、雑誌出身ですね。

佐々木 そう、ダイヤモンド誌出身だね。それに、講談社から独立した佐渡島さんのコルクなんかもある。人材の流動性はそれほど問題ではなく、やはりネットメディアで稼ぐモデルが確立されていないことがポイント。ネットで稼げないなら、雑誌が苦しくなってやめてもネットでやろうとはならない。
ネットメディアで稼げるモデルが出てくるのはこれからだ。1995年にインターネットが普及して、Facebookができるまでに10年かかった。
ネット黎明期の人たちは必ずしもFacebook的なものの登場を予測していたわけではない。それと同様に今想像もされてないメディアのビジネスモデルが出てくるのではないか。だから、君が現地取材をするときも「どういうビジネスモデルが主流になりますか?」と答えを求めても返ってこないから、現地の様子をひたすら追うのがおすすめだね。

ネットビジネスは"金鉱堀り"である

佐々木 誰もがネットメディアの稼ぎ方について成功の方程式を見いだせていない中、アマゾンがワシントンポストを買収したり、ネット通販大手のイーベイが出資してメディアを立ち上げたりしている動向に注目している。
物販も音楽もネットビジネスが進展していき、次はどうやらメディアだ、という流れでEC業界の巨人が参入してきた。ここからアメリカ東海岸を中心にイノベーションが生まれるのではないかな。

くま 既存メディアサイドではなく、外部から大変動が引き起こされるということですね。

佐々木 ただし物販において最終的にアマゾンのみが今の地位についたように、ネットビジネスのイノベーションの過程では無数の参入と大半の失敗、その中から生き残ったものが覇権を獲るということが繰り返されてきた。そういう意味でゴールドラッシュを求めて金鉱を掘るのといっしょで、ほとんどの人は掘り当てられない。掘る人よりもツルハシを配る人が儲かったりするかも知れないね。

くま メディア企業だけではなく、そうした西海岸のIT企業にも目を向け、取材しようと思います。しかし日本でいうと楽天やDeNAのような企業がメディア関連の新規事業を始めるというイメージがあまりもてませんね。

佐々木 それらの新興企業よりはNTTなどのレガシー系の企業のほうが考えられるね。Gunosyに出資しているのもKDDI。

ひたすら実践して、取材力とコンテンツ力を高めよ

くま 話は変わりますが、僕の計画している"取材留学"についてどう思われますか?

佐々木 いいんじゃないか。マーケットとして需要があるかはわからないが、現にアメリカ東海岸の動きを追っている人は、私の周囲でもとても少ないが、興味深いテーマなことは間違いない。だから、どんどんいけばいい。

くま 見ず知らずの日本人がいきなり乗り込んで、新興メディアの編集長がクローズな部分も語ってくれるのか、という点に悩んでいます。

佐々木 ビジネスモデルの根幹に関わる具体的な点は投資家との関係もあるから語れないだろうね。しかし、会社のビジョン、今やっていることとこれからやりたいことなんかは語ってくれるはずだよ。特に、スタートアップの経営者はとてもフランク。
あとはより多く話を引き出す取材力を今のうちにつけておくこと。新聞記者なんかは、殺人事件の遺族とか、非常に話を引き出しにくい人たちからも言質を引き出す能力を持っているわけだから。

くま 留学は来年なので、日本にいる間に多くのジャーナリストの方に会い、取材力を磨こうと思っています。その取材内容をブログにまとめて公開しようと思っているのですが、よりウケるための秘訣はありますか?

佐々木 まず文章力を磨くこと。そうすれば長い文章でも読まれる。ネット独特の話し言葉調にも慣れたほうがいいし、タイトルのセンスも問われる。そして、とにかくたくさん取材して、ネットに公開してフィードバックをたくさん受けること。ネットでは一貫性のない文章にすぐ突っ込みを入れてくる人がいるから、とても鍛えられる。私も集中砲火を食らったりすることがある(笑)

くま 佐々木さんでも炎上することがあるんですか……(笑) 佐々木さんはTwitterのフォロワーも20万人と多く、まさにインフルエンサーという感じですが、どうやってコンテンツ力を高めていったんですか?

佐々木 情報の摂取は欠かさないようにしていて、ストックとフローの2種類がある。フローのほうでは、ネットで1日に2000から3000の記事を読む。ただそれだけでもいけないから、ストックとして古典をたくさん読み、自分の世界観を養うようにしている。
 さらに、プラットフォームの流行り廃りに敏感であることも重要だと考えている。たとえば今や定番の有料メルマガを私は黎明期に始め、幸いたくさんの読者を得ることが出来た。しかしその後ホリエモンも始め、今や誰しもがやろうとして過当競争に陥っている。市場が飽和してから参入してきて「なんだメルマガは稼げないじゃないか」などと言っていてもしょうがない。また、質の低いメディアに投稿し続けると、自分のブランド価値の毀損にもつながる。

くま 書き手がプラットフォームに縛られない時代だからこそ、常にどういう媒体のポートフォリオを組んで書くのかが大事になるわけですね。

佐々木 そうだね。あとは君のコンテンツを成功させるには、ネットで影響力の高い人にTwitterでRTしてもらうなど、グロースハックと呼ばれるやり方がおすすめだ。

くま ぜひ今回のインタビューにおいても、出来上がった記事の拡散を協力していただきたいです(笑) 



(完) 

 佐々木 俊尚(ささき としなお、1961年12月5日 - )

毎日新聞、週刊「アスキー」編集部などを経てITジャーナリスト・作家として独立。

「当事者」の時代 (光文社新書)
佐々木 俊尚
光文社
2012-03-16

「当事者の時代」など、著書多数 

3/28 草稿作成

こんにちは。僕が目指している「取材留学」のあらましを書きます。

 僕が知りたいことは明確で、「デジタル時代のジャーナリズムとビジネスの関係はどうおりあいをつけていくのか」です。

 いま、世界中で紙のメディア業界の苦境が伝えられています。雑誌も新聞も以前のようには読まれません。そのカウンターパートとしてウェブメディア企業が出てきてアテンションを集めていて、伝統的な新聞社もデジタル版を出していますが、経営がうまく行っているところはごくわずかです。
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ウェブ媒体で読めるものは無料という意識付けがあって、課金がうまくいかないからです。デジタル版でいいコンテンツを出してもお客さんは取れず、広告単価は下がる一方です。

伝統メディアがそうしてもがく中、今それらのコンテンツをうまく編集するキュレーションメディアが出てきています。
しかし持てはやされてはいても、売上高では伝統メディアと2桁も違います。
更に問題があって、そうしたメディアは自分たちであまりコンテンツを作りません。みっちり取材してクオリティが高いものを作っても儲からず、テクノロジーの力で軽く編集しただけのものの方がより多くの人に受け入れられるようでは、誰が「取材」や「報道」を担っていくのでしょうか?市民の手にゆだねられるところもたくさんあるとは思いますが、専門家が不要になるとは思えません。
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日本でも同様の現象が起きていますが、アメリカはそうした 状況がより顕著です。新聞社はリストラで30%の人員をカットしました。

しかし、新しい流れも出てきています。アマゾンやイーベイといったIT企業が、次のイノベーションはメディアでおきると見当をつけて参入してきています。ワシントン・ポストは買収されました。
そして名物記者が伝統的なメディア企業を離れて、独立してデジタルメディアを立ち上げる動きが毎日のように報じられています。
ジャーナリズムの震源地ニューヨークで、今まさにメディアのイノベーションが起きようとしているのです。
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そうした流れを生で見て、当事者たちに"ジャーナリズムをどうしていきたいのか"、"取材は誰が担っていくのか"を問いたい。ビジネスとの境界線を感じたい。地殻変動をこの目で見届けて、それを多くの人に伝えたい。

日本とアメリカではもともとのジャーナリズムの土台も、企業の成り立ちもぜんぜん違います。でも、学べることがたくさんあるはずです。

しかし、いまアメリカの流れを現地で追っている日本人ジャーナリストをほとんど知りません。大手新聞社から数名がジャーナリズムスクールに通っているぐらいです。

それならば、幸い学生で身軽な僕が行くことに大きな意義があるのではないでしょうか。

次々と立ち上がる新興メディア企業の編集者を、伝統大手メディアの経営層やデジタル部門を、参入するIT企業の担当者を、そしてアカデミックな場でジャーナリズムを教授する人たちを取材し、そのビジョンを聞き出したい。一日でも置いてもらえるなら、業務の場を見たい、混じりたい。そして、自分で媒体をもってその様子を発信していきたい。
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とはいえ、今の僕はジャーナリズムに関する知識も、実務経験も未熟です。百戦錬磨の記者たちから上手く話を引き出していけるだけの取材力も、まだありません。

そこで、アメリカに飛びだす前に、まずは日本で多くのジャーナリストの話を聞きに行きます。熱意を伝えて、会ってもらって、持論をぶつけあわせてもらうことで、僕に欠けている知識と、取材能力とを引き上げます。自分なりの仮説を磨いた上でアメリカに持っていきます。

これが、僕の取材留学のあらましとなります。




ロードマップ(随時更新)

2014/03 ブログ開設
      佐々木俊尚氏取材
2015/01 渡米
2015/09ごろ 帰国予定

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