メディア・クエスター

メディア・コンテンツ業界に関する発信(海外やビジネスモデルへの言及が多い) 連絡はqumaruin(あっと)gmail.comまで。

 図1
(公式サイトより)

Gunosy」「Smartnews」「LineNews」など、さまざまなニュースアプリが流行している昨今。その中にあって、異彩を放っているのが株式会社UZABASENewsPicksです。

欲しい情報のみがユーザーに届けられ、そこに著名な経済評論家らの解説コメントが寄せられて理解が進む仕組みで人気を博しています。

他方でプロフェッショナル向けの企業分析ツール「SPEEDA」のグローバル展開に挑戦し、"経済情報におけるGoogleの役割を担いたい"と豪語する株式会社UZABASEは、メディア業界をどう捉え、どう変えていくつもりなのか。社長の梅田優祐氏にお話を伺いました。

「コンテンツ作る力」は既存メディアが圧倒的

大熊 本日はよろしくお願いします。UZABASEさんは元々外資系コンサルとか投資銀行出身の方が大半を占めていて、メディア業界出身の人は皆無ですよね。

メディア業界というのはある意味で古臭い、右肩下がりの業界に見えるかなとも思うんですが、どういう意図をもって参入したのでしょう?外部から、メディア業界はどのように見えていたんですか?

 

梅田 既存のメディアには100年を超える歴史があって、特に「調査報道」は彼らにしかできないし、コンテンツを創る力はめちゃくちゃに優れています。ベンチャーが一昼夜にして崩せるとは思えない。

でも、元々もつ仕組みがあまりに強固すぎて、今ユーザーがシフトしているデジタルの媒体には対応できてない、戸惑っているんじゃないかなとも思います。優れた調査報道力と、デジタルでのコンテンツ配信。この2つが融合する事が今後の鍵だと思っています。

図3
(梅田さんのFacebookより) 

プラットフォームとコンテンツをつなぐ

大熊 「調査報道」=取材に基づいた報道についてですが、経済メディアとしてのUZABASEのライバルであるブルームバーグやロイターも報道部隊を持っています。将来的にはUZABASEも調査報道するつもりですか?

 

梅田 はい、大いに考えています!!コンテンツを作る人と、デリバリーしている人が昔は一緒だったけど、分かれてきているのがデジタルの時代です。

コンテンツを作るのは新聞社もあるし、ブロガーさんでもいいといったように分散化してきている。しかしこれをデリバリーするプラットフォームはどんどん集約化していき、最終的に2つか3つぐらいしか残らないんじゃないんでしょうか。

分散化するコンテンツを作る人と、集約化するプラットフォームをいかにうまくつなぐかがこれからの課題です。

そして私たちが今担っているプラットフォームの部分をユーザーにとっていいものにするには、まず使いやすさとか、見やすいデザインにするという工夫が考えられます。しかしこれはいずれ必ずコモディティ化します。

そこで次は「コンテンツ」の勝負になってきます。そうしないとプラットフォームとして生き残っていけないでしょう。例えばAmazonも自社制作の番組に多額の投資をしており配信する事を計画しています。これと同様の流れだと思っています。

Amazonが自社製作のオンラインテレビ番組配信サービスを計画中


図2

Amazonより)

ターゲットはすべてのビジネスパーソン

大熊 NewsPicksを使っていて思うのが、今のところ利用者は“意識高い層”が中心ですよね。今後もこの層にフォーカスするのか、それとももっとマス向けを狙っていくんですか?

 

梅田 すべてのビジネスパーソンに向けたものにします。

 

大熊 先日、LINE Newsが新しいサービスを始めました。

【LINE NEWS】"ニュースアプリを利用しない層"に向けた取り組みをさらに強化


これによると、ニュースアプリに登録しているのはスマホユーザーのうち8%程度で、非常に能動的な層であるようです。そこで今後は受動的な層もとっていきたい、というのがLINEニュースの新サービスの狙いだそうです。

NewsPicksも今まさに能動的に情報をとりにいく媒体ですよね。受動的な人も使いたくなるようにする戦略はありますか?。

 

梅田 いずれ、動画を組み込むことを考えています。テレビってぼーっと見ますよね。あれが動画の最大の価値なので、やりたいです。

“発見”と“理解”同時に満たすのはNewsPicksだけ

大熊 現在の日本で最大の経済メディアといえば日経新聞です。でも日経新聞って、数百万人もの読者に向けて最大公約数的に書いているから、用語が変に抽象的になったりして、逆に誰にも理解できない媒体になっている、という指摘が考えられます。NewsPicksはそうならないためにはどうしますか?コンテンツの幅を広げれば、すみわけはできるんでしょうか。

梅田
 例えば“四半期決算の開示見直し 経産省が提言へ”というニュースの意味って、それが日本にとっていいことなのか悪いことなのか、大半の人には直観的にわからないですよね。でも
NewsPicksを見ると、一橋の教授とかアナリストが直接コメントしている。こういう解説によって理解が可能になるのがポイントです。

かのう
(NewsPicksより)
経済ニュースへの欲求は二つあると思っていて、1つは「このニュースが見たかったんだ」とい”発見”。もう1つは“理解”です。

発見と理解の両方を満たす媒体が必要なのに、今までなかったんです。発見の方は編集者が勝手にやってきたものを、NewsPicksでは自分の興味ある人をフォローできます。理解の方は、ニュースに対する反応から深められます。

 

大熊 やはり著名なビジネスマンや教授など、権威・発信力のある方が解説しているのがポイントですよね。ITについてホリエモンさんがおすすめしてたら読んでみようとか思います。こうした著名人はどうやって集めたんですか?

 

梅田 できる事はなんでもやりました(笑)。ただやはりビジョンへの共感は重要だと思います。経済学の教授に話を持ちかけた時も、確かにそういうメディアはない、必要だ、と言ってもらえて協力していただいたりといった形です。



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ブログを始めてちょうど1か月がたちました。
始める前は「こういう企画で誰か応じてくださるんだろうか」と不安でしたが、思った以上に反響が得られて自分でも驚いています。
これまでのところ、佐々木俊尚さん(ジャーナリスト)を皮切りに、瀧本哲史さん(投資家)・津田大介さん(ジャーナリスト)・梅田優祐さん(経営者)の4人にインタビューすることが出来、相談という形で堀潤(ジャーナリスト)さんと朝日新聞メディアラボのメンバーの方々のお話も伺えました。
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(4月15日、津田大介さんとの撮影)

まだまだ未熟ながらも、ここ1ヶ月を振り返る意味もこめて、「会いたい人に取材してブログに書く」というプロセスがいかに効率のいい学習方法かを説明していきます。

1.下調べに真剣になれる。

これまでお会いしてきた方々はみな各方面で活躍されていて、当然ながらものすごくご多忙でした。
そんな中でわざわざ時間をとって会ってもらう、しかも報酬などもお支払いできるわけではないので、せめていい質問をしなければ、相手に何か真新しいことを与えねば、というプレッシャーが働きます。

しかしこれは簡単ではありません。著名な方はインタビュー経験も豊富で、きちんと下調べしないと確実にネタがかぶります。
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そこで過去のインタビュー記事はなるべく読むようにし、著書にも全て目を通すようにしました。資料も漠然と読むのではなく「どういう切り口で書かれているのか」とか、よく使われるフレーズを認識していって「この人はここに拘りを持っているんだな」などとあたりをつける癖がつきました。

2. 生で1対1で話せるので、濃密な発見がある。

本や講義といった形式をとると、1人ないしは少数が多数に向けて発信するものとなります。そうするとどうしても内容は最大公約数的になりますが、それと比較して1対1で話す密度は段違いです。更には、公表されてないここだけの話も、聞けることがあります。

「東大新入生は新しいゲームを勝ち抜け」瀧本哲史さんインタビュー

の中で瀧本さんが

教授がどれだけ早口でしゃべったところで、自分でノートを読んだほうが圧倒的に速い
と仰っているように、ぼんやりと話を聞くだけなら読むのと比べてよっぽど効率が悪いです。ここで重要なのは、
自分の中で仮説を持っておくことでしょう。下調べに基づいて、「たぶん相手はこう答える」というイメージ像を作っておきます。

例えば僕の関心は「ネットメディアはビジネスとしてうまくいくのか、ジャーナリズムとの兼ね合いは可能なのか」です。取材対象が経済ニュースアプリ「NewsPicks」を出している株式会社UZABASEの梅田さんの時には、「梅田さんはビジネスとして上手くいくと考えてやっているはずだから、上手くいかないケースを挙げてみて、どう答えるかの反応を覗おう」などと考えます。

こうして仮説に基づいて相手に尋ねると、意外性の高い返答に出会うことがあります。それを見逃さず掘り下げていくまた新たな発見が……というようなサイクルが生まれます。この瞬間を味わうことこそ「話す」「聞く」ことの醍醐味ではないでしょうか。

3.音声情報と文字情報からのフィードバックが得られる

1と2については取材活動を始める前からそういう利点があるのではと思っていたことですが、この3についてはやってみて初めて気がつきました。
お話を伺ったあと、記事を書くために録音テープを聴きます。
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(flickr/ippinkan corp)

これをやってると、自分の相槌の打ち方のまずさとか、話の流れをきってしまうところとかが露骨に分かります。
なんでそんなに「なるほどなるほど」ばっかり言ってるんだ自分!というようなつっこみもよく入れます。
やっててめちゃくちゃ恥ずかしいです。恥ずかしいですけど、「ここで話の方向性を間違えたんだ」「ここでは黙っておくべきだった」などがありありと分かります。

何か特殊な活動をされている方以外は、自分の話し言葉を聞いて振り返る経験をつむことなんてまずないはずです。話し方を改善したい場合にはとってもおススメなやり方だということがわかりました。

音声での復習の後は、いよいよこれを文章にします。まとめる際には文章力とか構成を気にするので、もう一度話した内容について振り返れます。振り返りながら、自分なりの表現を探っていくことにもなります。

今のご時勢、仕入れた情報はどんどん流れていってしまい、僕もぼんやり読んで理解した気になったニュースとかは覚えていないことも多いです。

一方、みっちり下準備して仮設を立てる→生で話きく→音声情報から復習→文字情報でアウトプットをするという多方面からのアプローチで得られた情報はしっかり定着するストックになります。
何より、ここまでやると非常に楽しいです。

4.思いがけない出会いがある。

以上の過程を経て作った記事をブログに公開すると、ネットの世界に野ざらしにされます。どれだけウケたか、誰に読まれたかということがリアルな数字に表れてくるので、そのまま次に活きます。

そして、ブログで公開してみると意外な出会いが早くも沢山ありました。

投資家の五月さんが興味を持ってお話を聞きにきてくださったり、、新聞社の人に読んでいるよと言っていただいたりもしました。次の学習の機会も広がってくるのです。

これらはやる前からは予想もつかなかった、とってもありがたい成果です。


まとめると、高いモチベーションで準備できて、多方面から濃密な情報が得られる、という点で、今までやってきたどの勉強法よりも効率が良いです。


こうした「取材学習」とでも言うべきスタイルは、他のことにも応用できそうです。学問の興味ある分野について、その分野を研究している先生たちに取材するとか。趣味を突き詰めたくなったから、その分野で優れた人に会いに行って発表するだとか。


勿論、今回挙げたような利点を僕自身も完璧に活かせているとは言いがたく、準備不足を痛感したり、まずい作法をとってしまったと反省する日々ですが……。


これからも、会ってくださる方々に感謝しつつ、より実り多い取材学習となるよう進歩していきたいです。

先週インタビューさせていただいた津田大介さんが、「ツイッター創業物語」をおすすめしていました。
創業物語

僕は巨大IT企業のノンフィクションが大好きです。

グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ
スティーブン・レヴィ
阪急コミュニケーションズ
2011-12-16

フェイスブック ---子どもじみた王国
キャサリン・ロッシ
河出書房新社
2013-05-24


何が魅力的かというと、世の中を変えるサービスを打ち出した人々の内幕の人間模様が実に生生しく描かれているんです。ソーシャルの定義やコミュニケーションのあり方を一変させた企業の経営者がどこまでも人間臭かったり、アナログなところに妙な拘りがあったりするのってとってもツボです。

大抵主人公は偶然チャンスを得た天才的な創業者で、多くの人が価値に気付かない中、数人の協力者が天才を盛り立て、さまざまな壁を超えて圧倒的なサービスの浸透力で勢力図を塗り替えていく。でもそうした足元ではメンバーの力関係も目まぐるしく変わったりしていて、非常に人間的な衝突とか・和解とかを見ることが出来ます。

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(flickr/Anthony Quintano)

Twitterは特に好きなサービスなので期待ですね。

ところで、これらのドキュメンタリーを書いているのは、アメリカの著名なITジャーナリストが多いです。「ネット覇者の真実」は「WIRED」誌編集長のスティーブン・レヴィですし、「スティーブ・ジョブズ」のウォルター・アイザックソンは「TIME」誌の編集長をしてたこともあるジャーナリストです。彼らの長年の経験とそれに裏打ちされた深い洞察、そして関係者との広大な人脈が詳細な物語を与えてくれるのでしょう。サービスがローンチされる瞬間や念願のIPO前夜など1つ1つの局面に実際に立ち会っているかのような気分にさせられます。
いつか僕も、そうした文章をかけるようになりたい、と思うわけです。


日本だと、こうした創業物語は経営者自らが書いている印象です。古くはホンダとか京セラの創業物語は有名ですが、最近だとDeNAの南場さんも去年「不格好経営」を書きましたし(そしてやたらと配っていました)、サイバーエージェントの藤田さんや、おそらくもっとも有名なホリエモンさんも自著をどんどん書いてます。
不格好経営―チームDeNAの挑戦
南場 智子
日本経済新聞出版社
2013-06-11





これらを出版しているのは日経新聞だったり東洋経済新報だったりダイヤモンドだったり経済系のメディアですが、そうした会社が名物記者に任せてノンフィクションを書いたりしないんでしょうか。(そのあたりの業界の常識を、いまいち知りません。)本人では書けない会社・サービスの物語ってあると思います。

さて、いま日本で最もホットなIT企業といえば間違いなくLINE株式会社でしょう。

「LINE」サービス開始からわずか3年足らずで4億ユーザー突破という、日本企業において前例のないペースでグローバル展開が続いています。
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(公式資料より)
関係者に綿密に取材して、LINEの誕生秘話を本にすると間違いなく面白くなると思います。色々な意味で、他の国内外のメガベンチャーと歩んできた過程が異なるのです。

LINEというサービスを生み出したのは元NHN Japan。NHNは韓国の検索最大手企業です。ここの創業者の李海珍という人が自ら日本にきて進出を続けていましたが、5,6年もの間失敗の連続だったそうです。

そんな中、東日本震災が起きてコミュニケーションサービスの必要性を痛感して、ネイバー社内のコミュニケーションツールを改良して1か月半で作ったのが「LINE」だそうです。発想そのものはあったものの本当に急きょ作られたもので、事業計画にも書かれてなかったんだとか。
そうしたら爆発的にヒットして、当時流行りつつあったカカオトークや後発のcommを撃破し、日本人の代表的連絡手段として君臨することになりました。

また、現在日本で社長を務める森川亮さんは、テレビ局のエンジニア出身という面白い経歴をお持ちです。南場さんや楽天の三木谷さんのように外資系企業・MBA上がりの実業家とは大分毛色が違います。
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(MdN Design INTERACTIVEより)

はたしてLINEの誕生と成長は偶然の産物なのか、それとも起こるべくして起きたものなのか。必然だったとするならば、それを後押しした社内のカルチャーや、重要な時期に携わったステークホルダーはいったいどうした性質をもつものか。

会社としては、今夏に予定されている上場や、年内5億ユーザー獲得の目標に向かってWhatsApp&Facebookというグローバルの巨人との本格的な競争など、これからがヤマ場だと思います。
そんな近未来を占う意味でも、今こそ重厚なLINE誕生物語が読みたいです。




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